ID番号 | : | 03721 |
事件名 | : | 退職金請求事件/損害賠償反訴請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ミニジューク大阪事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | カラオケ等の機械の販売・リースを業とする会社にセールスマンとして勤務していた者が退職したとして退職金を請求したのに対し、売上げの虚偽申告等を理由として諭旨解雇がなされたケースで、合意解約の成否、退職金の支払請求の可否等が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法11条 労働基準法89条1項3の2号 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限 |
裁判年月日 | : | 1986年2月26日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和57年 (ワ) 6463 昭和59年 (ワ) 9756 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労経速報1252号12頁/労働判例471号44頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕 1 被告に本件退職金規定が存在すること、本件退職金規定によると、原告ら営業社員に対する退職金額は、退職前半年間の平均月収に勤続年数に対応する所定の支給率を乗じた金額であること、原告の勤続年数が九年二か月でこれに対応する支給率が七・二プラス一二分の二となることは当事者間に争いがない。そうすると、原告は、被告に対し、本件退職金規定に基づき、退職前半年間の平均月収に七・二プラス一二分の二の支給率を乗じた金額の退職金請求権を有することになる。 2 ところで、(証拠略)によると、被告において原告ら営業社員に対する毎月の給与は、基本給、インフレ手当、住宅・食事手当、ノルマ手当等の各種手当、売上歩合、奨励金で構成されていたことが認められるところ、原告は、右毎月の給与の額の月平均額をもって、本件退職金規定にいう退職半年前の平均月収であると主張するのに対し、被告は、これを争い、右毎月の給与のうちの基本給、売上歩合、奨励金の合計額の月平均額をもって右平均月収であると主張する。そこで検討するに、(人証略)によると、被告は、過去原告以外の営業社員に退職金を支給した際、その主張する解釈に従ってその営業社員の退職半年前の平均月収を計算し、これを右退職金算定の基礎としたことが認められるが、(証拠略)によると、本件退職金規定は、営業社員に対する退職金は退職半年前の賞与を除く平均月収に所定の支給率を乗じた金額とするとのみ規定していて、右平均月収が毎月の給与のうちの基本給、売上歩合、奨励金の合計額の月平均額とするとは何ら規定していないことが認められるから、労使間において他に取決めがある等の特段の事情がない限り、当該営業社員が退職半年前の間に被告から支給された諸手当を含む毎月の給与額の月平均額をもって本件退職金規定にいう退職半年前の平均月収と解するのが相当である。そして、右特段の事情は本件全証拠によるもこれを認めることはできない。そうすると、前認定のとおり、被告がかつてその主張する解釈に従って退職半年前の平均月収を計算しこれを基礎として退職金を支給したのは、本件退職金規定にいう退職半年前の平均月収の解釈を誤ったものといわなければならない。 〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕 原告は、昭和五七年二月一三日ころ、被告の営業担当専務取締役であるAに対し、自己都合により同月二〇日をもって退職したい旨の退職願を提出したところ、Aから後任者への事務引継ぎを終えるまで退職時期を延期して欲しい旨の要請を受けたこと、そして、原告が右要請を受けいれたため、Aは右退職願を受理したこと、その後原告は、全得意先を回るなどして遅くとも同年三月五日には後任者への事務引継ぎを終えたこと、ところが、原告は、右同日被告に出社した際、Aから不正行為の有無を問い質されたうえ、明日から来なくてよい、処分の内容については追って通知する旨申し渡されたため、翌六日から被告に出社しなくなったこと、そして、原告は、同月一一日ころ、被告から内容証明郵便をもって同月六日付で諭旨解雇する旨の通知を受けたこと、以上の事実が認められ、右認定事実によると、原告と被告との間には昭和五七年二月一三日ころ原告が後任者への事務引継ぎを終了した時点で退職(雇用契約解約)する旨の合意が成立したものであり、原告が、同年三月五日に右事務引継ぎを終了し被告に出社した際被告から原告に対し解雇の意思表示がなされたものとはみられないから、原告は同日の経過をもって被告を退職するに至ったものというべきである(したがって、被告の原告に対する前認定の諭旨解雇の意思表示も、原告が退職後になされたものというほかないから、その点において既にその効力を生じるに由ないものといわざるを得ない。) よって、原告を懲戒解雇処分に付したことを前提に原告の退職金請求権を否定する被告の抗弁はその余について判断するまでもなく失当であって採用することができない。 |