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ID番号 03729
事件名 賃金支払請求等仮処分申請事件
いわゆる事件名 協龍商事事件
争点
事案概要  会社が従業員に対し月間四五時間の残業を保障し、それができなかった場合には右時間数相当の残業手当を支給する旨の賃金規定に基づいて、原告らが右賃金の支払い等を求めて争った事例。
参照法条 労働基準法36条
労働基準法37条1項
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 支払い義務
労働時間(民事) / 三六協定
裁判年月日 1986年3月13日
裁判所名 京都地
裁判形式 決定
事件番号 昭和60年 (ヨ) 1100 
裁判結果 却下
出典 労働判例482号71頁/労経速報1263号12頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-割増賃金-支払い義務〕
〔労働時間-三六協定〕
 2 しかして、被申請会社が従業員に残業をさせるためには、労働基準法上、三六協定の締結が不可欠であって、たとえ従業員の承諾があったとしても、その締結なしに残業をさせたとすれば、同法に違反し、被申請会社は処罰を免れないのであるから、三六協定の締結がないとすれば、被申請会社の前記「残業をさせる義務」も履行不能になるというほかない。そして、本件申請にかかる期間中(昭和六〇年六月分から昭和六一年一月分までの間)、労使間に三六協定の締結がなされなかったことは前記認定のとおりであるから、その間、被申請会社の右義務は履行不能の状態にあったというべきであり、したがって、実質的にその不履行に基づく損害賠償請求の性格を有する本件残業保障金請求権の成否も、まず、被申請会社に右履行不能についての帰責事由が存するか否かにかかるものというべきである。
 3 そこで、右帰責事由の有無について検討するに、前記(二の4)認定の三六協定締結の交渉経過に照らせば、本件において、労使間に三六協定が締結されるに至らなかったのは、主として、三六協定の無理解による組合の態度に基づくものというべきであって、被申請会社にその責を負わしめることはできないものと認めるのが相当である。
 もっとも、被申請会社も、昭和六〇年九月四日以降、休日労働日数の点で、昭和五九年度以前の三六協定より厳しい案を提示していることは前記(二の4の(六))認定のとおりであるが、もともとこの案は休日労働を第五土曜日に限ろうとする組合案に対抗して提示されたものであり、組合との対立点がこの点のみに限られていたわけでもないし、また、少なくとも本件申請に至るまでの間は、組合もこの点をとりたてては明確に問題にしていないこと等の事情に照らせば、この点が三六協定の締結を阻害した主因をなしたものとも認め難く、したがって、右事実のみをとらえて、三六協定不締結の責任が被申請会社にあるということはできない。