全 情 報

ID番号 03740
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 財団法人山形市学校給食会事件
争点
事案概要  財団法人Aの職員が、退職にあたって、右財団法人の規則がその職員の勤務条件に関しては同市職員に適用される規定を準用する旨の規定に基づいて、退職勧奨による優遇措置のある退職金を請求した事例。
参照法条 労働基準法3章
労働基準法89条1項3の2号
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
裁判年月日 1986年3月28日
裁判所名 仙台高
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ネ) 128 
裁判結果 上告
出典 労働民例集37巻2・3合併号188頁/労働判例490号95頁
審級関係 一審/山形地/昭60. 2.22/昭和58年(ワ)96号
評釈論文 坂本宏志・賃金と社会保障1037号45~49頁1990年7月10日
判決理由 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕
 勧奨退職制度が設けられている所以は、地方公務員は分限、懲戒による場合(昭和五六年法律第九二号による改正後は定年制も導入された。)のほかその意に反して離職せしめられないという強い身分保障を受け、たとえ公務の能率向上を目的に掲げたとしても任命権者において任意に職員を免職することを認めないので、地方公共団体において職員の新陳代謝を促進し職員の年齢構成を正常な状態で維持するためには、離職を相当とする職員について辞職を誘引する以外に方法がないから、退職手当額に優遇措置を講じて退職を勧奨し、もって辞職申出を決意させる必要があるからであり、勧奨退職制度は公務員の身分保障と表裏一体の関係にあるといってもよい。他方、被控訴人のような民法上の財団法人における雇用契約関係にあっては使用者は原則として被用者を解雇する権利を有し、例外的に解雇権濫用の法理、労働基準法上の解雇予告及び予告手当等の制度による制約を受けるのにすぎないから、従業員の新陳代謝を促進しその年齢構成を正常な状態で維持するためには解雇権を行使すれば足り、定年制が設けられていなくとも支障はなく、勧奨退職制度を必ずしも必要とせず、使用者が雇用秩序を形成するにあたり勧奨退職制度を採用しないのが通例であり、それには十分な合理性がある。従って、山形市職員に適用される規定のうち勧奨退職に関する規定は被控訴人の職員には準用されないものと解するのが相当である。