全 情 報

ID番号 03746
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 西宮電機工業事件
争点
事案概要  会社が、「昭和五九年九月二七日をもって、現在の嘱託職を解職致します。但し、引続き当会社に就職希望があれば昭和五九年八月二七日までに申出を願います。もしお申出のない時は退職されるものと決定いたします。尚申出のある時は当会社の考へ方を申し上げ、其後一ヶ年間の給与金其他を提示し引続き嘱託で就職如何を定めます。」との通知書を交付し、右申出がないことを理由に解雇の効力が生じたものとしたことにつき、女子嘱託労働者であった申請人が地位保全の仮仮分を求めた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
民法627条
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
裁判年月日 1986年4月24日
裁判所名 神戸地尼崎支
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (ヨ) 275 
裁判結果 却下
出典 労働判例476号34頁/労経速報1255号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕
 嘱託職員は、労働条件においても、雇用保障の面でも、正社員よりも不利な処遇を受けることもやむを得ないところであり、解雇の場合にも、解雇事由の合理性ないし相当性が要求される度合いが減じ、解雇権の濫用として解雇が無効とされる範囲は小さいものと解すべきである。
 このような嘱託職員の性質からすれば、人員削減の必要が生じたときには、できるだけ正社員の解雇を回避して、先ず嘱託職員を整理解雇の対象とすることは、合理的な整理基準であるということができる。
 (中略)
 なお、一般の整理解雇については、企業の経営状態が悪いというだけで、ただちに解雇の正当性が肯定されるわけではなく、解雇以外に経営改善の余地がないこと、すなわち、希望退職の募集とか、冗費の節減その他の方法を講じて、整理解雇を回避するための措置が尽されていることも必要であるが、本件解雇にあたって、被申請人においてそのような努力や配慮がなされたことを認めるべき疎明はない。しかし、被申請人のような小規模な企業にあっては、ほかにとるべき措置も乏しく、かつ、限界があるうえ、右に述べたような嘱託職員の立場と性格からすれば、正社員の場合ほど厳格に解する必要はなく、前記認定のような経営悪化の事態とそのための経営合理化の必要が疎明された以上、ほかにこれを不当とすべき特段の事情が認められない限り、嘱託職員の整理解雇の相当性を肯定してしかるべきである。