ID番号 | : | 03763 |
事件名 | : | 雇傭関係存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 聖ドミニコ学院事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 期間を一年とする私立高校の非常勤講師が右期間満了により雇傭契約が終了したとして就労を拒否されたのに対し、雇傭関係の存続確認、賃金の支払を求めて争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法21条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 1986年8月7日 |
裁判所名 | : | 仙台地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和49年 (ワ) 757 |
裁判結果 | : | 請求棄却 |
出典 | : | タイムズ618号79頁/労働判例482号42頁/労経速報1264号11頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 原告は、仮に本件雇傭契約が期間の定めのある契約であるとしても、雇傭継続の期待の存在、労働法・教育法の観点、契約不更新の合意の不存在等を理由に、更新拒絶に解雇の法理が類推適用されるべきであり、その結果被告の更新拒絶は権利濫用であると主張する。 そこで右主張について検討するに、労働法・教育法の観点からみた教員の雇傭契約における期間の定めの有効性については前述したとおりであり、原告は専任教師として採用されなければならなかったものということはできないし、本件雇傭契約における期間の定めは有効であって、単純に右の観点から契約の更新が原則となるとの法理を導きえないことは明らかである。そして、前記認定のとおり被告の就業規則には当然更新を前提とする規定が全く存在せず、またそのような事実上の取扱いもない以上、原告の右主張をそのまま採用することはできない。しかし、期間の定めのある雇傭契約であっても、期間の満了毎に当然更新され、あたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態にある場合には、期間満了を理由とする傭止めの意思表示は実質において解雇の意思表示にあたり、その実質に鑑み、その効力の判断にあたっては、解雇に関する法理を類推適用すべきであるし、また、労働者が右契約の更新、継続を当然のこととして期待、信頼してきたという相互関係のもとに労働契約関係が存続、維持されてきた場合には、更新拒絶を正当とすべき特段の事情がない限り、期間満了を理由とする傭止めをすることは、信義則上からも許されないものというべきである。 これを本件について見るに、原告自身の更新は一回だけであり、被告における非常勤講師の契約更新の状況が一部の特殊事情のある場合を除いて当然更新といったものではなかったし、雇傭期間の定めのない専任教師とそうでない非常勤講師との仕事の種類・内容には大きな差異(質的に異なる。)があり、非常勤講師から専任教師への登用の慣行・制度もなかったことは前記認定のとおりである。また、原告の採用時から傭止めされるまでの間、被告が原告に本件雇傭契約の更新を期待させる言動をとったことを認めるに足りる証拠はなく、むしろ、昭和四八年の更新の際に、他の職場を探すようにと申し渡していたことは前記認定のとおりであって、以上の事実に照らせば、本件雇傭契約が期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態のものであったとは到底いえないし、原告が非常勤講師としてであっても契約の更新を期待しうる客観的状況にもなかったことは明白である。原告が勤務を継続する中で、契約の更新を期待したとしても、その期待は希望的観測の域を出ないといわざるをえないものである。 したがって、本件雇傭契約において、被告が原告に対し傭止めの意思表示をしても、解雇に関する法理を類推適用したり信義則を働かせたりする余地はないので、再抗弁2も理由がない。 |