全 情 報

ID番号 03773
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 東邦技術事件
争点
事案概要  事業経営不振にともなう八名の整理解雇につき、整理解雇が正当であるための要件を充たしていないとして無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の必要性
裁判年月日 1986年9月25日
裁判所名 秋田地大曲支
裁判形式 決定
事件番号 昭和60年 (ヨ) 61 
裁判結果 認容
出典 労働判例486号98頁/労経速報1284号20頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕
 1 およそ整理解雇が正当であるといいうるためには、第一に従業員を解雇することが企業の合理的運営のためやむを得ない必要に基づくものであること、第二に解雇に先立ち退職者の募集等解雇回避努力がなされたこと、第三に具体的な解雇対象者の選定が客観的合理的基準に基づくものであることの各要件を充足することを要すると解すべきである。
〔解雇-整理解雇-整理解雇の必要性〕
 (二) 右の事実関係によれば、債務者会社は経営危機に陥り、人員削減を含む合理化をする必要があったと一応認めることができる。しかしながら、前記のとおり当初の債務者会社の再建計画は、債務者会社一二名、系列会社一二名の減員を目標としたものであって、その減員数の当否はしばらくおくとしても本件整理解雇時には、債務者会社一三名、系列会社三一名の人員が削減され、減員についてはその目標が達成されていたのであるから、わずか一年余の間に減員を九名増加させる必要性があったかという点について検討されなければならない。
 この点につき債務者会社は、第一に本件整理解雇時である昭和六〇年度の受注が前年以前に比し、大幅に下落する見通しであり今後も増加は見込めないこと、第二に債務者会社の現業部門の収益率が悪いこと、第三に残留した従業員の雇用条件を現状どおり維持する必要があったこと、第四に人件費が削減され赤字が解消できること、第五に債務者会社の賃金の減額等の建設的な再建策を債権者らが拒否したことを理由として二一名の減員が必要であった旨主張するが、疎明資料によれば、第一の点については、これに沿う資料、陳述書も存するが、債務者会社のこれまでの受注実績に比し、昭和六〇年度下半期の出来高が極めて低いことなどからすれば、これは労使紛争等による一時的な状態とみうるのであって、減員増加の合理的な理由とは認められない。又、第二ないし第四の点については第一次会社再建計画と第二次再建計画との間に出来高の点を除いては特段の変化が認められず、第五の点については、債権者らも賃金の減額等を内容とする再建案を提示しているのであっていずれも合理的な理由とは認められない。したがって、本件における整理解雇の必要性は未だこれを認めることはできず本件整理解雇は理由がないものということができる。