ID番号 | : | 03783 |
事件名 | : | 未払賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | マルヤタクシー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 休職期間中の従業員が、仕事への復帰可能とする医師の診断書を添えて復職要求したが、会社がこれを拒否した事案につき、右拒否には正当理由がなく、復職申出をした時点で当然復職したものとした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 休職 / 傷病休職 |
裁判年月日 | : | 1986年10月17日 |
裁判所名 | : | 仙台地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和57年 (ワ) 1667 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労働判例486号91頁/労経速報1284号13頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔休職-傷病休職〕 1 私傷病休職中の従業員の復職に関しては、原告主張の内容のとおりの規定が被告の就業規則(乙第四五号証)中にあることは当事者間に争いがなく、同規定によれば、右復職は、原則として、被告の指示する医師または病院の治癒を証明する診断書が提出され、被告が就業可能と判断したときに認められるとされている。したがって、同規定のうえからは、従業員の復職は治癒を証明する診断書の提出に加え、被告の就業可能との判断がその一要件となっており、従業員から治癒を証明する診断書が提出されたとしても、被告が就業可能と認めないかぎり、右復職要件は充たされないこととなる。 2 しかしながら、同就業規則によれば、私傷病休職の場合、休職期間中は無給で、勤続年数にも算入されず、(二六条、二七条)、また特に、休職期間(原則として最長一年)満了後もなお休職事由が消滅しないときは従業員は当然退職したことになるとの効果が付与されていること(二四条、三〇条)が認められ、被告による休職事由の消滅の有無に関する判断(就業可能か否かの判断)が従業員の身分に決定的な影響を及ぼしうる結果となっていることに鑑みると、被告は、従業員が復職の際提出してきた専門医による診断書の内容を原則として充分尊重すべきであり、仮に治癒(復職可能)を証明する適正な診断書が提出されたにも拘わらず被告において従業員の復職を拒否する場合には、提出された診断書の内容とは異なる判断に至った合理的理由を従業員に明示すべき義務があり、右合理的な理由の明示を怠ったまま従業員の復職を一方的に拒否した場合には、従業員は復職の申し出をなした時点で当然復職したものと解するのが相当である。 (中略) 6 以上のとおり、被告の本件復職拒否は、原告への合理的理由の明示を欠いた違法、無効なものと解すべきであるから、原告は、復職の申し出をした昭和五五年一二月四日以降当然に復職したものと認められ、被告の復職拒否を原因とする不就労期間について、民法五三六条二項に基づき後記賃金債権を請求しうるものとなる。 |