全 情 報

ID番号 03784
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 ヒノヤタクシー事件
争点
事案概要  物損事故をしばしば惹起せしめるタクシー運転手に対し、「技能が著しく劣り上達の見込なく(中略)従業員として不適当と認めたとき」という普通解雇理由にあたるとしてなされた解雇につき、これを無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
裁判年月日 1986年10月17日
裁判所名 盛岡地
裁判形式 決定
事件番号 昭和61年 (ヨ) 84 
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 労働判例488号92頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
 (ウ) なお、前記(2)(ア)ないし(エ)の四件の事故全部を通じ、人損が生じた旨の疎明はなされておらず、生じた物損の程度も比較的軽微であると認められ、また、債権者が右各事故により何らかの刑事処分又は行政処分を受けた旨の疎明もなされてはいない。
 以上の各事情を総合考慮し、なお前記1のとおり、債権者が昭和六〇年五月に自動車運転二種免許を取得してから、本件事故当時それほどの期間を経過してはいなかったと認められることをも勘案すると、本件各事故を根拠として、債権者の技能が著しく劣り、改善の見込もなく、債権者からは、将来にわたっても、企業目的の達成に寄与しうるような質、量における労働義務の遂行を期待しえないと認めることには無理があると考えざるをえないのであって、前記のとおり就業規則二八条四号の該当性の判断には相当程度債務者の裁量に委ねられるところがあることを考慮してもなお、本件はいまだ同号所定の場合にはあたらないと解するのが相当であって、これと反する債務者の主張は失当であるというべきである。