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ID番号 03794
事件名 懲戒免職処分禁止(変更)、地位保全等(変更後)仮処分申請事件
いわゆる事件名 国鉄長崎駅事件
争点
事案概要  助役らに対する暴力行為等を理由としてなされた国労門司地本長崎県支部長崎駅連合区分会の執行委員長に対する懲戒免職処分の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
裁判年月日 1986年11月19日
裁判所名 長崎地
裁判形式 決定
事件番号 昭和61年 (ヨ) 137 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例489号74頁
審級関係
評釈論文 石井将・労働法律旬報1159・1160号130~131頁1987年1月25日
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
 本件処分の事由とされた事実を全体としてみると、債権者による故なき一方的な暴言、反抗等の攻撃があって、A、B両助役らが専ら被害を受けたという図式は成立せず、右当事者らを含む労使の対立関係が継続し、深刻な敵対感情が醸成されてきた中において、双方ともいたずらに挑発し反発し合い、互いの依って立つ立場と人格に対する理解と尊重を失念したばかりか、むしろこれを否定し蔑視し合う言動に終始し、低次元における不毛の紛議、紛争をことさらに過熱させたところがあるのであり、国鉄という公共企業における職場のあるべき秩序を無用に混乱させた点では、双方とも同等の責任があるといわざるをえず、その過程において発生した債権者の側の不穏当な言動のみをとらえて、債務者が専有する最も強大な懲戒処分権を行使することは、いかにも不均衡、不公平の感を免れない。
 このことと、前記のとおり債務者が本件処分を選択する根拠となった事由のうち最も情が重いと考えられる債権者の諸行為の存在が疎明資料上認定できないこと、その他一切の事情を総合勘案すると、債権者に対する懲戒免職処分をもってした債務者の処置は、債権者の過去の懲戒処分歴(疎明資料によれば、昭和五〇年に上司に暴力を振るい、傷害を負わせたとして停職三か月、その後九回にわたり、組合活動の指導による戒告、減給処分及び訓告を受けたことが認められる。)を考慮してもなお重きに失するといわざるをえない。
 5 以上の次第であるから、本件処分が懲戒処分に関する債務者の裁量権の濫用に該当し、無効であるという債権者の主張は一応理由があると認められる。