全 情 報

ID番号 03797
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 医療法人広崎会事件
争点
事案概要  医療法人の従業員に対して看護婦募集のため一年足らずの間に二六二日も博多へ出張させたことの不法行為性、右医療法人の理事に対する暴行、傷害を理由になされた懲戒解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
裁判年月日 1986年11月28日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ワ) 9651 
裁判結果 一部認容
出典 タイムズ644号107頁/労働判例487号47頁/労経速報1289号10頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
 従って、本件懲戒解雇は、Aの受傷の程度は必ずしも軽微なものとはいえないけれども、その理由とされた暴行の態様、暴行に至る経緯、解雇権の濫用目的の存在、適正手続の不履践等の観点からみて、社会通念上相当なものとして是認できないものであって無効であると判断せざるを得ない。
 被告の病院において慢性的な看護婦不足の状況にあったことは一応認められる(前記1(一))ものの、原告をして昭和五六年六月二七日以降、原告のやっていたような態様での看護婦募集のための出張を命じる業務上の必要性が被告に存したものとは到底認められないというほかない。被告は、募集の方法としては、単に広告や既成の人脈を頼るという方法だけでなく、直接現地に赴いてその状況を把握し、新しい人脈を形成することが大事であって、そのためには地道に何度となく出張を重ねて努力する必要があるとして、本件出張命令の態様には何ら違法性がない旨主張するが、前記1(三)(四)認定のとおり、原告がやっていた募集業務のやり方は、博多周辺の大学附属病院や国公立病院などを主に廻って、廊下や待合所で看護婦に声をかける程度のものであって、新しい人脈を開発するというものには程遠く、B理事長らも、原告作成の報告書を通じて、これを知っていたにもかかわらず、新しい人脈を開発するために必要な助言などを一切せずに漫然と出張命令を繰返していたものであって、結局、被告の右主張は、本件事実関係の下では妥当せず失当である。
 3 以上の検討によれば、本件出張命令は、原告主張のとおり、原告に対する報復をし、ひいては原告が本件出張命令に従うことに嫌気をさして任意退職を申出ることを期待してなされたものであり、被告主張の業務上の必要性に基づくものとは認められないから(抗弁2は、理由がない。)、業務命令権を濫用したものというべきである。