ID番号 | : | 03801 |
事件名 | : | 労働契約存在確認等請求上告事件 |
いわゆる事件名 | : | 日立メディコ事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 二か月の労働契約を五回にわたって更新してきた臨時員に対する更新拒絶につき、解雇に関する法理を適用すべきであるが、更新拒絶はやむを得ないものとして、原審の判断を正当とした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法629条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 1986年12月4日 |
裁判所名 | : | 最高一小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和56年 (オ) 225 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 時報1221号134頁/タイムズ629号117頁/裁判集民149号209頁/労働判例486号6頁/労経速報1280号3頁/金融商事762号45頁 |
審級関係 | : | 控訴審/00395/東京高/昭55.12.16/昭和52年(ネ)178号 |
評釈論文 | : | 宮本安美・民商法雑誌97巻2号254~258頁1987年11月/古西信夫・労働判例百選<第6版>〔別冊ジュリスト134〕154~155頁1995年5月/三井正信・労働法律旬報1174号48~54頁1987年8月25日/山田省三・季刊労働法144号163~169頁1987年7月/石川善則・ジュリスト882号78~80頁1987年4月15日/川口美貴・日本労働法学会誌70号113~119頁1987年10月/中町誠・最高裁労働判例〔10〕―問題点とその解説312~321頁1991年3月/藤原稔弘・季刊労働法14 |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇手続〕 (1) 上告人は、昭和四五年一二月一日から同月二〇日までの期間を定めて被上告人の柏工場に雇用され、同月二一日以降、期間二か月の本件労働契約が五回更新されて昭和四六年一〇月二〇日に至った臨時員である。(2) 柏工場の臨時員制度は、景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で設けられたものであり、臨時員の採用に当たっては、学科試験とか技能試験とかは行わず、面接において健康状態、経歴、趣味、家族構成などを尋ねるのみで採用を決定するという簡易な方法をとっている。(3) 被上告人が昭和四五年八月から一二月までの間に採用した柏工場の臨時員九〇名のうち、翌四六年一〇月二〇日まで雇用関係が継続した者は、本工採用者を除けば、上告人を含む一四名である。(4) 柏工場においては、臨時員に対し、例外はあるものの、一般的には前作業的要素の作業、単純な作業、精度がさほど重要視されていない作業に従事させる方針をとっており、上告人も比較的簡易な作業に従事していた。(5) 被上告人は、臨時員の契約更新に当たっては、更新期間の約一週間前に本人の意思を確認し、当初作成の労働契約書の「4雇用期間」欄に順次雇用期間を記入し、臨時員の印を押捺せしめていた(もっとも、上告人が属する機械組においては、本人の意思が確認されたときは、給料の受領のために預かってある印章を庶務係が本人に代わって押捺していた。)ものであり、上告人と被上告人との間の五回にわたる本件労働契約の更新は、いずれも期間満了の都度新たな契約を締結する旨を合意することによってされてきたものである。 以上の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として肯認することができ、その過程に所論の違法はない。 原審の確定した右事実関係の下においては、本件労働契約の期間の定めを民法九〇条に違反するものということはできず、また、五回にわたる契約の更新によって、本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、あるいは上告人と被上告人との間に期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできないというべきである。 〔解雇-解雇事由-企業解散・事業の一部廃止〕 柏工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、上告人との間においても五回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によって雇止めにするに当たっては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反又は不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかったとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。(2) しかし、右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。(3) したがって、後記のとおり独立採算制がとられている被上告人の柏工場において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかったとしても、それをもって不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。 |