ID番号 | : | 03802 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 鳥取県教育委員会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 男女年齢差のある退職勧奨年齢基準に基づく退職勧奨につき、不法行為にあたるとして損害賠償請求が認容された事例。 |
参照法条 | : | 民法90条 民法709条 日本国憲法14条 国家賠償法1条 |
体系項目 | : | 退職 / 退職勧奨 |
裁判年月日 | : | 1986年12月4日 |
裁判所名 | : | 鳥取地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和57年 (ワ) 217 昭和59年 (ワ) 38 昭和59年 (ワ) 60 |
裁判結果 | : | 確定 |
出典 | : | 時報1216号32頁/タイムズ624号101頁/労経速報1276号9頁/労働判例486号53頁/判例地方自治32号28頁/訟務月報33巻7号1886頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 安枝英のぶ・判例評論345〔判例時報1247〕63~68頁1987年11月/古崎慶長・判例地方自治49号84~87頁1988年12月/産形稔・地方公務員月報291号49~57頁1987年10月/松本光寿・労働法律旬報1166号9~10頁1987年4月25日/新谷眞人・季刊労働法143号201~203頁1987年4月 |
判決理由 | : | 〔退職-退職勧奨〕 退職勧奨そのものは雇用関係にある者に対し、自発的な退職意思の形成を慫慂するためになす事実行為であり、場合によっては雇傭契約の合意解約の申入れ或いはその誘因という法律行為の性格をも併せもつ場合もあるが、いずれの場合も被勧奨者は何らの拘束なしに自由に意思決定をなしうるのであり、いかなる場合も勧奨行為に応じる義務はないものであるから、任命権者は雇傭契約の一方の当事者として人事管理等の必要に基づき職務行為として自由にいつでも被用者に対して退職勧奨をなすことができるというべきである。 しかしながら、退職勧奨は往々にして職務上の上下関係を利用してなされることが多く場合によっては不当な強要にわたり実質的に強制退職を強いる結果となる場合があることは弁論の全趣旨に照らし容易に推測することができる。そうすると、事実行為にすぎない退職勧奨とはいえそれには自ら限界があるものというべきであり、それは被勧奨者が退職勧奨を受けるに相当な年齢に達しており、かつその選定が公平なものであって、また説得のための手段・方法が社会通念上相当であることを要するものと解するのが相当である。しかして、右選定が不公平であったりまた説得のための手段・方法が社会通念上相当性を欠く場合はこのような退職勧奨は違法性を帯びると評価せざるを得ない場合もあり、殊に右勧奨に応じない場合は将来退職する際に一般的には採られる優遇措置も講じないという一連の手続のもとでは、事実行為に過ぎないとされる右退職勧奨の違法性も強度になるものと思料される。 (中略) (三) 結局以上の認定・考察の結果によると、県教委が男女年齢差のある退職勧奨年齢基準を設定し、これに基づき原告らに対し退職勧奨を行い、最終的には退職手当につき優遇措置を講じなかった一連の行為は、男女差別に基づく継続的な一連の一個の不法行為を構成するというべきである。 |