ID番号 | : | 03805 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件/金員支払仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 大阪相互タクシー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 就業時間中の組合活動を理由とするタクシー運転手に対する下車勤処分(第一次処分)、右下車勤処分に従わず会社批判のビラ配布等を理由とする懲戒解雇(第二次処分)につき、いずれも無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 会社中傷・名誉毀損 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1986年12月10日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和61年 (ヨ) 2020 昭和61年 (ヨ) 2324 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 時報1231号157頁/労働判例487号26頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 会社は、第一次下車勤処分に際し、申請人らの昭和六一年四月一一日の組合活動(会社正門、社長宅前、会社周辺における宣伝活動)が就業時間中の組合活動にあたることを主たる処分理由として掲げているところ、同日の申請人らの組合活動は、会社の主張を前提としても、その時間帯は午後一四時五〇分から一五時四五分までであり、疎明資料によれば申請人らを含む運転手の就業時間は午後四時からと一応認められるから、右時間帯は、申請人らの就業時間外であることは明らかであって、右組合活動を就業規則第七六条一六号所定の「就業時間中」の組合活動に該当するとみることは、その文理解釈の限界を超えるもので到底許されるものではない。そして、会社が従前から掲示等によって、同号にいう就業時間中には、組合活動を行う相手方従業員が就業時間中である場合も含まれる旨を周知徹底させていたとしても、これによって右就業規則が変更されたとみるべきものでもない。 もっとも、会社の正常な業務の運営が阻害されるような組合活動が許容されるものではないが、当日の組合活動は、いずれも就業時間外に会社主張場所付近の公道上でなされた宣伝活動が中心であり、会社が懲戒事由となり得る組合活動として、就業規則第七六条一六号において「会社の事業用地及び建物内」における組合活動と「就業時間中」の組合活動のみを掲げている趣旨に鑑みれば、就業時間外に会社の事業用地もしくは建物外で行われる組合活動については、同条三号(会社または上司に損害を与える目的による行動)など他の条項に該当する場合を除いては、これを懲戒事由となし得ないというべきである。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-会社中傷・名誉毀損〕 ところで、本件ビラの作成、配布の状況は、前認定のとおりであるところ、本件全疎明資料によっても、申請人X1がこれに関与していた形跡は窺われず、また、右ビラは、申請人X2らの説明等によって知り得た事実に基づいて、自交総連大阪地連東地区協議会においてこれを作成したものであって、右ビラの記載にいささか隠当を欠く表現が存するにしても、記載された具体的事実については、一部経営批判にわたる部分も存するものの、労働条件と密接に関わる限度でのものであるうえ、これを何らの根拠のない虚偽の事実ということはできないし、会社の機密に属する事項にも該当しないから、同申請人の説明自体に会社に対する誠実義務に違反する点が存したとはいい難く、また、同申請人が右ビラを配布したとの疎明も不充分である(《証拠略》の各写真によれば、昭和五七年七月二三日に同申請人が自交総連大阪地連のものと思われる車の助手席に乗っている姿が撮られており、その宣伝活動に加わっていたことが窺われるが、これとて、右ビラ配布行為と直接結びつくものではない。)から、右ビラの記載内容の違法性について判断するまでもなく、これを処分事由となし得ない。 そうすると、本件懲戒解雇は、結局処分理由を欠くものとして無効というべきである。 |