全 情 報

ID番号 03827
事件名 雇用関係地位確認等請求事件
いわゆる事件名 国民金融公庫事件
争点
事案概要  上司に対して入院加療を要するような傷害を働いたとして懲戒解雇された職員が右解雇の効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続
裁判年月日 1989年3月2日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 1580 
裁判結果 棄却
出典 労働判例536号45頁/労経速報1352号25頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
 右原告の傷害行為は、A検査部長の検査部長及び役員としての職務の遂行を長期間にわたって不能ならしめ、もって被告の業務に著しい支障、混乱を生じさせたものといえるから、前記就業規則四八条一号前段に該当するものというべきであり、前記2のいきさつ、行為態様、結果等に照らし、免職処分は相当といえるから、原告には、懲戒免職事由があるものといえる。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒手続〕
 同2については、原告が、前記二2の傷害事件により、A検査部長から告訴されたこと、被告の就業規則三二条一項二号には、職員が刑事事件に関し起訴されたときは休職を命ずる旨の規定があることはいずれも当事者間に争いがなく、(人証略)によれば、本件懲戒免職は、右告訴後、その刑事処分がなされる前になされていること、右刑事処分の結果は不起訴処分であったことが認められる。
 そうすると、仮に、前記就業規則三二条一項二号が裁判による事実関係確定まで懲戒処分を制約する趣旨を含むものと解する余地があるとしても、本件は同号に直接該当するものではないから、本件懲戒免職の手続が就業規則に反するということはできず、残るは、本件懲戒免職手続の妥当性の問題であるが、右規定を右のように解釈する下でも、告訴中、刑事処分決定前になされた懲戒処分は、直ちに妥当性を欠くものとなるとまでいうことはできず、また、被告では、職員が告訴されたときは、まず自宅待機とし、起訴された場合には休職にして、有罪判決を受けて初めて懲戒処分がなされ、不起訴の場合には直ちに復職させるのが通例であったとの原告の主張は、これを認めるに足りる証拠がなく、本件懲戒免職が被告における通例に反するものということもできない。そして、(証拠略)によれば、被告は、関係者からの事情聴取等により事実関係を十分調査のうえ、原告を懲戒免職処分に付するのが相当との判断を固めたが、なお、原告の将来も考慮して、幾度も依願退職を説得し、原告がこれに応じようとしないため、就業規則の規定に基づき懲戒委員会の諮問を経て、原告の所属する労働組合に、労働協約に基づき、事前に通知したうえで、本件懲戒免職処分に至ったことが認められ、右事実に鑑みれば、本件懲戒免職の手続は相当というべきであって、妥当性を欠く点は見いだし難い。