全 情 報

ID番号 03913
事件名 地位保全金員支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 塩谷商店事件
争点
事案概要  「おれにはヤクザの仲間もいる」など、経営者に対する暴言を理由とする解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 暴力・暴行・暴言
裁判年月日 1988年1月26日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 昭和62年 (ヨ) 2804 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例517号72頁/労経速報1321号8頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-暴力・暴行〕
 申請人は、被申請人に対し、診断書にあるとおりギプスは一〇日にははずせるから、そうなればすぐにでも働きたい旨繰り返し訴えたが、被申請人が、これに取り合わず、診断書にギプスの除去後約三週間の通院加療を要するとあることをとらえて、完治するまでは働いてもらうわけにいかない旨答えたことから、両者の間で「働く」、「待て」の言い争いとなり、被申請人の妻もこれに加わって言い合ううち、申請人は、被申請人らの言葉に激高し、被申請人らに対し、「おまえら、なにがたがたいうてんねん。」、「おれの言うこと聞かんかったら、どうなるかわかっているのか。」、「こんな店すぐにでもつぶして、仕事もできんようにしてやる。」、「おれにはやくざの仲間もいる。」などの暴言を浴びせ、さらに、騒ぎを聞き付けて顔を出した被申請人の長男にも、「おのれみたいなん関係ないんじゃ。」などと言って詰め寄るなどし、その後も被申請人らに対し同様の罵倒を繰り返したため、被申請人は、遂に、申請人に対し、「やめてもらうから。」と告げて、解雇の意思表示を明確にした。
 (中略)
 以上の認定事実によると、本件解雇の直接のきっかけとなった六月八日の申請人の行動は、それのみをとらえるならば到底許されない所為であるといわざるを得ない。しかしながら、それが直ちに解雇権の行使を相当とするかは別問題であるところ、それまでのいきさつをも踏まえこれを全体として見るならば、要するに言葉の行き違いから生じた突発的な喧嘩であるにすぎず、申請人が、それまで、前示三3の暴行事件を除き、内実はともかく、七年近くもの間、表面的には平穏に勤務を継続してきていることを考慮するならば、他に取り立てて強い非難に値するほどの行為をしたとの疎明がない本件においては、右行動ゆえに直ちに申請人を解雇することは相当性を欠き、本件解雇は解雇権の濫用にあたり無効であるといわざるを得ない。