ID番号 | : | 03916 |
事件名 | : | 遺族補償費等不支給処分取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 日田労基署長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 山林作業における「山仙頭」として集運材作業に従事してきた者につき労災保険法の「労働者」といえるか否かが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法9条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約 |
裁判年月日 | : | 1988年1月28日 |
裁判所名 | : | 福岡高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和61年 (行コ) 7 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 訟務月報34巻8号1706頁/労働判例512号53頁 |
審級関係 | : | 上告審/最高/ . ./昭和63年(行ツ)70号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-労働者-委任・請負と労働契約〕 1 労災法において保険給付の対象となる「労働者」(同法一条)の定義に関する規定は存在しない。しかし、同法が労働基準法第八章「災害補償」に定める各規定の使用者の労災補償義務に係わるものとして労働者保護のため使用者全額負担の責任保険として制定された経緯に鑑みると、同法上の「労働者」概念は労働基準法上の労働者概念と軌を一にするものと解するのが相当である。しかして、労働基準法九条によると、同法上の「労働者」は、職業の種類を問わず、同法八条所定の「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と規定されているところ、これは要するに使用者との使用従属関係の下に労務を提供し、その対価として使用者から賃金を得る者を指すものと解すべきである。このような使用従属関係の有無は、使用者とされる者と労働者とされる者との間の契約関係の実態を直視し、その契約関係の締結経緯、履行状況(とくに指揮監督関係の存否・内容)、時間的、場所的拘束性の有無・程度、業務用機材の負担関係、使用者の服務規律の適用の有無、報酬の性格、課税関係、その他諸般の事情を総合考慮して、その実態が右にいう使用従属関係の下における労務の提供と評価するにふさわしいものであるかどうかによって判断するのが相当である。ところで、山仙頭の山林作業に従事する形態は、木材市場の前記の如き合理化・近代化に伴い、従来の同輩者中の第一人者的地位にとどまる者から一部独立の事業主として請負業化している者まで幅広く出現しているところであり、その労働者性の判断に当っては、個々の事例ごとに右にみた観点に従ってその判断をなすべきである。 2 右のことを前提に本件をみるに、亡Aは、昭和五〇年頃から大型の機械装置である集材機を複数セット所有し、グループ員を率いて特定の製材業者や森林組合の輩下に就くことなく、永年集運材作業を専門に行い、一時に複数の製材所から注文を受けて集運材作業に従事することもあるなど右作業の具体的現場では亡Aがグループ員の指揮監督に当り、グループ員に対する労賃も依頼主から支払われる報酬の中から自己の管理下においてこれを一定の基準に従って支払い、自らは昭和五一年以降個人事業主として事業税を申告、納付してきている事実が認められる。かかる事実に照らすと、亡AはBから本件山林作業の依頼を受けた昭和五五年当時、すでに日田地方にみられる同輩者中の第一人者的地位にある山仙頭の立場を超えて、自らグループ員を雇用する一個の独立した事業主としての地位を有していたものと認めるのが相当である。 |