ID番号 | : | 03925 |
事件名 | : | 地位保全金員支払仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 日野興業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 自己の保有するトラックを持ち込んで、組立式仮設トイレ、浴室の組立等に従事する者が、右仮設トイレ等の製造販売会社の「解除」通告に対し、労働者として地位保全の申立をした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法9条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約 |
裁判年月日 | : | 1988年2月17日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和62年 (ヨ) 3147 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労働判例513号23頁/労経速報1324号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-労働者-委任・請負と労働契約〕 2 ところで、当該契約が雇用契約であるか否かは、契約の形式にとらわれることなく、その契約関係の実体に則して検討し、当該当事者間における実質的使用従属関係の存否を基準にして判断するのが相当である。 そこで、これを本件について検討する。 右認定の事実によれば、申請人らが、自己所有のトラック、工具を使用し、自から調達した砂、セメント、ブロック等の資材を用いて、被申請人から交付された仮設トイレ等の設置及び解体撤去工事を行っていたことが明らかであり、外観的には請負契約の履行と解される余地もなくはない。 しかしながら、右認定の事実によって認められる本件契約締結の経緯や申請人らの行う本件工事の実体に則して考察すると、申請人らは、本件契約締結に当って、履歴書を持参のうえ面接し、被申請人側で予め定めた諸条件を承諾する場合にのみ契約に至るのであり、また、申請人らは、被申請人の営業に不可欠な仮設トイレ等の設置、解体搬(ママ)去工事の現場工事人として、その営業組織に組入れられ、被申請人の受注した仮設トイレ等の設置、解体撤去工事に合せて、その指定する時間、場所で、その指定する方法で、かつ、個々の工事に関する工事内容の報告を義務付けられ、通常、少くとも午前九時から午後三時ころまでは時間的拘束を受けて、長年月継続的に(長い者は二十数年にも及んでいる。)本件工事に従事してきたのであり、さらに、その工事に対して支払われる金員のうち、申請人らが負担すべき諸経費を控除した部分は、本件工事の労務に対する対価と見られるのであって、これらの諸点を併せ考えると、前記の、申請人らが自己所有のトラック、工具を用い資材を提供している点を考慮しても、申請人らは、本件工事に関する限り、被申請人の拘束支配下にあり、その一般的指揮監督に従っており、自己の責任と計算において、自由に自己の労働力の対価を得るといった関係にはなく、したがって、申請人らと被申請人との間には、実質的使用従属関係があると解するのが相当であり、自己所有トラック等の使用あるいは資材の提供等は、被申請人側の経営上、業務上の都合に由来した一方的な指示によるものであって、申請人らからすれば、右契約上の労務提供のための手段方法にすぎないといえよう。 右によれば、申請人らと被申請人間で締結された本件契約は、雇用契約というべきである。 |