ID番号 | : | 03944 |
事件名 | : | 不当労働行為禁止仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 国労兵庫支部鷹取分会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 詰所内における休憩時間中のビラ配布に対する使用者の妨害禁止を求め、仮処分を申請した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法34条1項 |
体系項目 | : | 休憩(民事) / 休憩の自由利用 / 休憩中の政治活動 |
裁判年月日 | : | 1988年3月22日 |
裁判所名 | : | 神戸地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和62年 (ヨ) 419 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働判例517号52頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔休憩-休憩の自由利用-休憩中の政治活動〕 二 企業に雇用されている労働者は、労働協約等特別の合意がない限り、会社の所有し管理する物的施設を、雇用契約の趣旨に従って労務提供をするために必要な範囲において、定められた企業秩序に服する態様において利用が許されているにすぎないから、企業秩序維持の要請に基づく規律による制約を免れず、休憩時間といえども時間を自由に利用すること、を認められたに過ぎないのであって、その自由な利用が企業施設内で行われる場合には、同様に企業秩序維持の面からの制約を受けるというべきであるから、労働者が企業施設を演説、集会、ビラ配布等に利用する場合には、休憩時間中であっても、利用の態様如何によっては使用者の施設の管理を妨げる虞れがあり、他の社員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいては企業の運営に支障を及ぼし、企業秩序が乱される虞れがあるから、使用者がその就業規則で労働者において企業施設をビラ配布等に利用するときは事前に使用者の許可を得なければならない旨の規定を置くことは、休憩時間の自由利用に対する合理的な制約であると解すべきであり(最高裁判所昭和五二年一二月一三日判決、同昭和五四年一〇月三〇日判決参照)、従って、前記就業規則の規定が有効であることはいうまでもない。このことは、そのビラ配布等が債権者の組合活動として行われるものであること、債権者が債務者の企業内組合であることを考慮に入れても、同様である。 以上の見地に立って本件をみるに、本件仮処分申請は、休憩時間中、前記詰所における組合活動としてのビラ配布の妨害禁止及びこれを理由とする懲戒や不利益取扱いの禁止を求めるものであって、限られた局面においてではあっても、右のような就業規則の適用を一般的、抽象的に排除することに帰するから、このような結果を仮処分によって実現することは許されないというべきである。 三 もっとも、右に述べた趣旨からして、債権者による無許可のビラ配布がすべて就業規則違反になる訳ではなく、形式的には就業規則に違反しても、職場内の企業秩序を乱す虞れがない特別の事情があるために右規則違反になるとはいえない場合もあるであろうが、そのような場合に該当するか否かは、問題となった事案毎に、ビラ配布の目的、ビラの内容、配布数、配布時間、配布方法等諸般の事情を考慮して個々的に判断されるというべきであって、休憩時間中、詰所における組合活動としてのビラ配布すべてが職場内の企業秩序を乱す虞れがないと断ずることはできない。のみならず、前記認定の鷹取工場内の詰所の使用目的、使用状況、債権者がこれまでなしたビラ配布の方法、ビラの内容、頻度等に徴すると、債権者の意図するビラ配布が債務者の事業の運営に支障を及ぼさず、企業秩序を乱す虞れが全くないということもできない。 |