ID番号 | : | 03966 |
事件名 | : | 地位確認請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 郵政職員兼職禁止事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 懲戒免職処分を受けた郵政省職員が人事院により懲戒停職一年の修正判定を受けるまでの間に市会議員に立候補して当選し、郵政職員としての地位を失ったとされたことにつき地位確認を求めた事例。 |
参照法条 | : | 公職選挙法90条 |
体系項目 | : | 退職 / 失職 |
裁判年月日 | : | 1988年5月26日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和62年 (行コ) 9 |
裁判結果 | : | 取消・認容(上告) |
出典 | : | 労働民例集39巻23号199頁/時報1277号157頁/東高民時報39巻5~8号31頁/労働判例519号70頁/訟務月報35巻1号89頁 |
審級関係 | : | 上告審/最高一小/平 1. 4.27/昭和63年(行ツ)131号 |
評釈論文 | : | 野間賢・季刊労働法149号166~167頁1988年10月 |
判決理由 | : | 〔退職-失職〕 被控訴人が前記立候補の届出をした昭和五四年九月三〇日当時は、人事院に対して審査請求中であるとはいえ、本件処分を受けて公務員たる地位にはなかつたから、公選法八九条一項、九〇条の要件に該当しないことは明らかであるが、本件判定により被控訴人は同年四月二八日に遡つて公務員の地位を回復し、停職期間中に公職に立候補したことになるというべきである。そして、このような場合にも公選法九〇条の適用があり、被控訴人は前記立候補届出の日に郵政省職員の地位を辞したものとみなされるというほかはない。すなわち、本件判定により、被控訴人は一面において、本件判定の限度で原状を回復され、本件処分による不利益は除去されるが、反面これにより公務員として負担すべき義務ないし不利益も原則的にはいわば復活することを免れない。そして被控訴人が本件処分について不服申立をすることは、本件処分が取り消されることにより原職に復帰し、本件処分による不利益を排除すること、すなわち原状回復による利益を享受しようと意欲するものと解されるが、盾の半面としてこれに伴つて生ずる不利益を拒否することは許されないといわざるをえない。もつとも、本件判定以前、すなわち本件処分の変更以前においては、被控訴人の職務遂行義務のように、右期間中被控訴人がこれを履行することは事実上不可能である上、控訴人が本件処分をし、被控訴人の職務遂行の受領を拒否していたのであるから、たとえ遡つて原状が回復されても事実上及び衡平上被控訴人においてこれを負担していたとすることはできないものがあり、義務ないし不利益の種類及び態様によつてはこれを負担することがなくなることがありうることは否定できない。しかしながら、被控訴人の意思によつて選択しうる事項については、その選択に従つた結果を回避することはできないというべきである。被控訴人は本件処分期間中、公務員としての職務専念義務から解放されるから、生計の資を得るための途を選択することは当然許されるが、その途が市議会議員立候補の一つだけであつたと認めるに足りる資料がない以上、複数の選択肢があつたとみざるをえないところ、被控訴人が自己の意思に基づいて公務員の地位の保持と法律上相い容れない右立候補をあえて選択した以上、これに伴う郵政省職員の地位の喪失という不利益を甘受せざるをえないといわなければならない。 |