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ID番号 03971
事件名 解雇無効確認等請求控訴、同附帯控訴事件
いわゆる事件名 日本冶金工業事件
争点
事案概要  起訴休職処分を受けていた従業員が、右処分の基礎となった刑事裁判の確定の事実を五年七カ月もの間会社に申告せず、しかも会社の再三の照会にも応じず、仮処分で仮払金等の支払いを受けていた労働者に対する解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 人格的信頼関係
裁判年月日 1988年5月31日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (ネ) 2962 
昭和62年 (ネ) 1238 
裁判結果 棄却(上告)
出典 労働民例集39巻2・3合併号204頁/労働判例530号66頁
審級関係 一審/03776/東京地/昭61. 9.29/昭和58年(ワ)2191号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-人格的信頼関係〕
 控訴人は、本件休職処分はその処分事由を欠くが故に無効なものであり、前記昭和五〇年二月七日の仮処分判決によつてその無効が判断されており、もともと存在しなかつた休職事由の消滅について申告義務が生ずる余地もないと主張する。しかし、本件休職処分は諸般の事情を総合して無効と判断されるとはいえ、被控訴人が右処分の基礎とした起訴の事実は存在したのであり、仮処分判決が右処分の効力を停止したのは仮の地位を定めたものにすぎず、被控訴人は、依然右処分の有効であることを主張して控訴人の就労を拒否していたのであつて、起訴事件が終了した事実が判明すれば、被控訴人としても、もはや休職処分を維持する理由がなくなり、控訴人を復職させなければならなかつたのである。他方、労働契約は、労働者が賃金を対価として労務を提供することをその本質的要素とするものであり、控訴人は、前記仮処分判決が賃金の仮払を命じ就労請求権を否定した結果とはいえ、労務を提供することなく、賃金の支払を受けていたのであるから、このような事態を解消し正常な契約関係を回復することが可能となつたときには、控訴人も進んでその措置を講ずることが、労働契約における信義則から要請されるものということができる。したがつて、控訴人は、本件休職処分が無効であるにかかわらず、処分事由たる起訴の事実の消滅を被控訴人に申告すべき義務を負うものと解すべきである。そして、前記認定の事実関係によれば、控訴人は、右義務を怠つたことにより、長期間にわたり、受領する賃金に対応する労務を全く怠つていたのと同一の結果を生じさせていた。