ID番号 | : | 03975 |
事件名 | : | 損害賠償請求上告、民訴法一九八条二項の原状回復の申立上告事件 |
いわゆる事件名 | : | 福岡中央郵便局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 郵政監察官に対する公務執行妨害、傷害等により起訴された郵便局員に対する起訴休職処分の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 国家賠償法1条 国家公務員法79条2号 国家公務員法80条2項 |
体系項目 | : | 休職 / 起訴休職 |
裁判年月日 | : | 1988年6月16日 |
裁判所名 | : | 最高一小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和59年 (オ) 890 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 時報1300号49頁/タイムズ683号50頁/労働判例519号23頁/金融商事801号32頁 |
審級関係 | : | 控訴審/01951/福岡高/昭59. 4.26/昭和55年(ネ)776号 |
評釈論文 | : | 瀬戸正義・ジュリスト929号66~67頁1989年3月15日/川添利賢・平成元年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊735〕142~143頁1990年10月/木村実・判例評論366〔判例時報1312〕195~200頁1989年8月1日/林修三・時の法令1349号82~90頁1989年3月15日 |
判決理由 | : | 〔休職-起訴休職〕 国家公務員法(以下「国公法」という。)七九条二号の規定する起訴休職制度は、国家公務員が刑事事件に関し起訴された場合に、主として公務に対する国民の信頼を確保し、かつ、職場秩序を保持する目的から、当該公務員をして、右事件の訴訟係属が終了するまで、公務員としての身分を保有させながら職務に従事させないこととする制度であると解される。そして、国公法は休職処分についての具体的な基準を設けていないのであるから、公務員が刑事事件につき起訴された場合に、休職処分を行うか否かは、任命権者の裁量に任されているというべきであり、任命権者が右の裁量権の行使としてした休職処分は、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合でない限り、国家賠償法一条一項にいう違法な行為には当たらないと解するのが相当である。 (中略) 右の事実関係によれば、本件刑事事件は、職場内において警戒線を張っていた管理職らに対し、暴行を加えて傷害を負わせたというものであるから、国民一般の強い非難に値する内容のものであるのみならず、公務執行妨害罪の法定刑に照らすと、上告人は、本件刑事事件につき有罪とされた場合には、禁錮以上の刑に処されることを免れない結果、公務員の欠格条項(国公法三八条二号参照)に該当する者となるのであるから、上告人がこのような行為をしたとして起訴されたにもかかわらず、その職務に従事させることは、公務に対する国民の信頼を失墜し、かつ、職場の秩序を乱すものであるというべきである。このような事情を総合勘案すると、上告人が主として機械的作業に従事していた者であっても、本件休職処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものであるということはできない。なお、所論は、上告人は身柄を拘束されずに起訴されたものであり、公判期日における裁判所への出頭等は、年次有給休暇あるいは週休日などを利用すれば十分可能であるから、起訴されたからといって職務専念義務に悪影響を及ぼすものではない旨主張するが、前記のとおり、公務に対する国民の信頼の確保及び職場秩序の保持の観点から起訴休職の必要性が認められる以上、所論の事情は前記の判断を左右するものとはいえない。したがって、本件休職処分が国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。 |