ID番号 | : | 03999 |
事件名 | : | 不支給処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 佐伯労基署長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | けい石採掘作業場において、他の就業者に対して具体的な作業指示をし現場責任者的立場にあった者が、労基法・労災保険法上の労働者に該当するとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法9条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 労働者の概念 |
裁判年月日 | : | 1988年8月29日 |
裁判所名 | : | 大分地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和60年 (行ウ) 5 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 訟務月報35巻4号656頁/労働判例524号6頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-労働者-労働者の概念〕 労災法の適用を受くべき労働者の意義については、同法に明文の規定は存しないが、労働基準法に規定する労働者と同一のものをいうと解される。そして、同法九条では、「労働者とは、職業の種類を問わず、(同法の適用を受ける事業に)使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と定義されている。右の「使用される者」とは、支配従属関係の下で労務を提供する者と解され、「賃金」については同法一一条で「労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」とされているから、結局労災法の適用を受くべき労働者にあたるか否かは、その者が使用者との支配従属関係の下に労務を提供し、その対償として使用者から報酬の支払を受けている者であるかどうかによって決すべきことになる。 これを本件についてみるに、前記認定のとおり、原告は自ら一定の作業に従事するほか、同じグループで働いていた他の就業者に対して具体的な作業指示をするなど現場責任者的立場にあったものではあるが、原告が現場責任者としての仕事をすることは訴外会社から命ぜられた原告の職務内容の一つであり、しかも原告の完全な裁量により作業指示等をしていたというものではなく、訴外会社から指示された作業方針に基づいて、これを行っていたものであるから、原告が他の就業者に対して具体的な作業指示等をしていたからといって原告がその業務を遂行するにあたり訴外会社の指揮命令に服さない独立した立場にあったということはできない。 むしろ、原告及び他の就業者はそれぞれ訴外会社と直接の契約関係に立っていたこと、原告らの報酬は出来高払いであったが(報酬が出来高払いという一事をもって、その労務供給形態が請負であって労働契約ではないということを基礎づけることはできない。)、報酬額は出来高と就業日数により各人ごとに(原告については最高の就業日数の者と同一の日数として)客観的に定まっていたこと、報酬は訴外会社がその額を計算して直接各人に支払われていたことからすると、原告一人が原告らのグループの損益計算の主体となったり、出来高が僅少の場合の危険を負担したりするという立場にあったものではなく、このことに、本件現場での作業に用いた機械類はすべて訴外会社あるいはA会社の所有であり、原告らが持ち込んだものは何一つなかったこと、原告が退職した後も他の就業者らで作業が続けられたことを併せ考えると原告の立場には独立の事業者としての性格はなかったというべきであり、さらに訴外会社は社長のBが一月に三回位現場に赴くなどして原告らの作業に対して具体的な指示を与えていたこと、原告は他の就業者とともに本来予定されたけい石採掘作業の業務以外に、訴外会社の指示により、A会社の指揮監督下に作業機械の修理等の作業にも従事していたこと、勤務時間は午前七時半から午後四時半までと決められ、原告はその就業期間中ほぼその勤務時間どおり勤務していたし、勤務場所も本件現場と指定されていたこと、原告はその就業期間中本件現場以外の職場で就業することは全くなかったことをも考えると、原告は使用者たる訴外会社との支配従属関係の下で労務を提供していた者であるというべきである。 |