ID番号 | : | 04016 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分命令申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 静岡県富士自動車学校事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 経営不振を理由とするパートタイマーに対する雇止め(契約更新拒否)が有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 1988年9月28日 |
裁判所名 | : | 静岡地富士支 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和62年 (ヨ) 84 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働判例528号61頁/労経速報1345号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 松田保彦・ジュリスト953号136~138頁1990年4月1日/野間賢・季刊労働法151号150~151頁1989年4月 |
判決理由 | : | 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 債権者はパートタイマーとして比較的簡単な手続で期間を定めて雇用されたものであるから、ある程度の雇用の継続が期待されたものであるとしても、その雇止めの効力を判断する基準については、終身雇用の期待のもとに期間を定めない労働契約を締結している正社員を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるものというべきところ、右認定の昭和六〇年度に赤字に転落し、その後も増々悪化していた債務者の事業状況、経営状態等に関する諸事情によれば、昭和六二年一二月一二当時の債務者には、就業規則第二一条第九号が職員の解雇事由として定める「やむを得ない会社の都合によるとき」に該当する事由があったものであると認めることができる。 また、右認定事実によれば、本件雇止めのなされた当時、債権者の所属する組合と債務者の労使が厳しく対立し、債権者は組合員としてその少し前に二回にわたり敢行されたストライキに参加したことなどが明らかであるが、他方、右認定事実によれば本件雇止めをした当時の債務者は切迫した経営状態にあり、経営上の展望も開けない状態にあって、夜間アルバイト四名の雇止めをしたのに引き続き、間接要員を削減し、Y校の人件費を少しでも減少させるべくパートタイマーである債権者とAの雇止めを決意したのはやむをえない措置であって、その点に不合理な点はないことが認められ、これらの事情を彼此総合して考えれば、右認定の諸事実によっては、債権者に対する雇止めにつき、債務者に不当労働行為意思があったものと認めるに足りず、他にこれを疎明するに足りる資料はない。 更にまた、右認定事実によれば、債務者の経営悪化が債務者の故意行為によるものであるとはいえず、かような事実を一応認めるに足りる疎明資料は他にないかたわら、右認定事実によれば、債権者の雇止めに先立ち四名の夜間アルバイト全員が使用を取りやめられ、債権者と同時にもう一人のパートタイマーでAも雇止めされ同じ取扱いをうけたものであり、これに対し、当時唯一人の正社員でない従業員であった嘱託のBは、雇止めされなかったが、同人は債権者やAと異なり、パートタイマーではなく嘱託で、雇用期間の定めなく雇用され、渉外係の業務に従事し、人事考課も受けていたなど債権者やAに比べてより債務者との結び付きが強く、企業の基幹に近い労働者であったものと認められるから、Bを雇止めせず、債権者やAを雇止めしたことが不公平で、信義則に反したり、権利の濫用にあたるものと認めることはできず、他にこれらを疎明するに足りる資料はない。 以上のほか、本件雇止めの無効原因を疎明するに足りる資料はない。 そうだとすれば、本件雇止めは有効であり、その通告後三〇日の経過により、債権者と債務者との労働契約は終了するに至ったものというべきである。 |