ID番号 | : | 04023 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 高砂自動車事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 乗務記録に社長等に対する個人的誹謗を八カ月にわたり二〇回記載したタクシー運転手に対する解雇が有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 会社批判 |
裁判年月日 | : | 1988年9月30日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和63年 (ヨ) 2206 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労経速報1338号15頁/労働判例529号83頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-会社批判〕 乗務記録は、乗務員の私的な記録ではなく、業務上の記録であるというその性質からすると、法令による必要的記載事項のほかは何を記載し、何を記載してはならないかは、事業者が自由に定められることであり、その記載事項について、事業者が乗務員に命令をなしうることは明らかである。そして、被申請人の代表取締役や幹部職員を悪党などと攻撃する本件記載は、その内容、文言からしても乗務記録に記載するにふさわしくない事項であり、なかんずく六月分の記載は、それが監督官庁に提出されるものであるということからすると被申請人の信用をも害するおそれもあるものであるから、その記載を禁止する職務命令は、正当なものである。 (三) ところで、疎明によると被申請人の就業規則は七三条において懲戒解雇事由を定め、その一号においては「「業務上の指示命令に従わないとき」という七二条三号に定める懲戒事由があって、かつ情状の重いとき」(なお、右一号の文言自体は、「前二条による懲戒を受けたにも拘らずなお改悛見込みがないとき、もしくは情状が重いとき」と規定しているが、それは、「前二条による懲戒を受けたにも拘らずなお改悛の見込みのないとき」又は「前二条の懲戒事由に該当し、かつ情状の重いとき」という意味と解すべきである。)をも、その一四号においては「業務上の指示、命令に不当に反抗して事業場の秩序を紊したとき」を、それぞれその事由の一として掲げていることが一応認められる。 また、疎明によると、被申請人の就業規則四六条一項は、普通解雇事由として、「勤務成績が著しく悪く改悛の見込みがないとき。」(一号)など四つの事由のほか、「前各号の外これに準ずる事由のあるとき。」(五号)との事由を規定していることが一応認められる。 しかるところ、申請人は、前1(三)ないし(五)認定のとおり、被申請人の再三にわたる正当な禁止命令を無視し、そのような記載をなすことを正当として、長期にわたり本件記載を続けたのであるところ、このような行為は、それによって具体的、個別的な業務阻害のが(ママ)生じたか否かを問題にするまでもなく(もっとも、六月分の記載が、被申請人の信用をも害するおそれもあるものであったことは、前(二)説示のとおりである。)、それ自体で被申請人の秩序を著しく害する行為であるというべきであるから、右就業規則七三条一号(右説示の意味のもの)又は同条一四号の懲戒解雇事由に該当するか、少なくとも就業規則四六条一項一号又はこれに準ずるものとして同項五号の普通解雇事由に該当すると認めるのが相当である。 |