全 情 報

ID番号 04025
事件名 懲戒処分無効確認等請求事件
いわゆる事件名 福岡県教委事件
争点
事案概要  地公法三七条一項違反の争議行為に参加した教員に対する戒告処分に理由があり、懲戒権の濫用にもあたらずが有効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
地方公務員法39条1項
地方公務員法39条2項
民法1条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1988年10月5日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (行ウ) 3 
裁判結果 棄却
出典 訟務月報35巻4号700頁/労働判例528号40頁/判例地方自治60号27頁
審級関係 控訴審/福岡高/   .  ./昭和63年(行コ)15号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 地公法三七条一項が憲法二八条に違反しないことは、いわゆる岩教組事件についての最高裁判所大法廷判決(昭和五一年五月二一日判決・刑集三〇巻五号一一七八頁)が判示したところであり、当裁判所も右判断を相当と思料する。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 地方公務員に懲戒事由がある場合に、懲戒権者が当該公務員を懲戒処分に付すべきかどうか、また、懲戒処分をするときにいかなる懲戒処分を選択すべきかを決するについては公正でなければならない(地公法二七条)ことはもちろんであるが、懲戒権者は懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、その他諸般の事情を考慮して、懲戒処分に付すべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定できるのであって、それらは懲戒権者の裁量に任されているものと解される。したがって、右の裁量は恣意にわたることをえないことは当然であるが、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして違法とならないものというべきである。(最高裁判所昭和五二年一二月二〇日第三小法廷判決・民集三一巻七号一一〇一頁参照)。
 これを本件についてみるに、原告らは本件争議行為に参加して就労しなかったものであるところ、本件争議行為は午前半日に及ぶものであって、その影響を無視することはできないから、原告ら主張の諸事情を考慮に入れても、原告らに対する本件各処分が社会観念上著しく妥当を欠くものとはいい難く、本件各処分が懲戒権者に任された裁量権の範囲を超え、これを濫用したものと判断することはできない。