全 情 報

ID番号 04036
事件名 配転命令効力停止等仮処分申請事件
いわゆる事件名 西日本旅客鉄道事件
争点
事案概要  国鉄の民営化にさいして、新見運転区から岡山運転所に配属する旨の意思表示の効力停止を求める仮処分申請が却下された事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
裁判年月日 1988年10月27日
裁判所名 岡山地
裁判形式 決定
事件番号 昭和62年 (ヨ) 91 
裁判結果 却下
出典 労経速報1342号3頁/労働判例532号84頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 右事実によれば、国鉄当時、合理化と経営環境の悪化によって職員の余剰人員が増大していたが、その解雇を避けるため、新会社設立に当たっては、その各種の活用策を考え新規採用の職員のうち余剰人員を右活用策の事業に振り向けることとし、その一環として、新見区車両検査係の検修職の業務のうち「誘導業務」についての研修が未修了で、同職として不適当な債権者を、余剰人員の一人として岡山運転所車両技術係に勤務指定し、右活用策の一つである整備事業センターもしくは車両総点検チームの仕事に就かせることとなったことが認められ、したがって、本件勤務指定は業務上の必要性があったものと認められる。
 なお、債権者は、本件勤務指定の人選基準が曖昧であるとか、債権者よりも長期間新見運転区に在勤している者を配転ないし勤務指定するべきである等と主張するが、使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により、労働者の勤務場所を決定できるものであり、右の業務上の必要性は、当該勤務先への異動が余人をもっては容易に替えがたい程の高度の必要性に限定されるものではないから(最高裁二小昭和六一・七・一四、集民一四八号二八一頁参照)、右の業務上の必要性がみとめられる外に、人選の具体的基準が明らかにならなければ直ちに人事権の濫用として無効となるものでもないし、同一勤務場所に債権者より長期在勤している者が他にいるのに、その者を先に他の場所へ勤務指定しなかったからといって、それだけで、それが人事権の濫用として無効となるものでもない。
 (中略)
 右の事実に、国鉄事業は前認定のとおり破壊したのであるからその再建のためには職員は多少の不利益、不便は甘受すべきであること等を併せ考えると、債権者はその主張のような不利益があるとすれば、債務者の提供する宿舎に入居することによってその解消を図るなどの真摯な対応を考えるべきであり、債務者が右宿舎に入居すれば、債権者の主張する生活上の不利益はほぼ解消するのみならず、もともと、債権者の主張する生活上の不利益は、現在においては、右認定のとおりさほど著しいものとも認められず、他に特段の事情があるものとは認め難いから、債権者の生活上の不利益は、その甘受すべき程度を著しく超えるものとはいえない。
 (中略)
 右事実および前示二の1、2の事実を総合勘案してみると、債権者の本件勤務指定は前示のとおり業務上の必要性があり、その生活上の不利益も甘受すべき程度であると認められ、これとの対比において債権者が他へ転出したことにより受ける組合活動上の不利益もさほど顕著なものではないと認められるのであって、本件勤務指定が債権者主張のような差別待遇であり、国労組合員に対する見せしめの人事であるとは、にわかに認め難い。