全 情 報

ID番号 04037
事件名 配転命令効力停止等仮処分申請事件
いわゆる事件名 西日本旅客鉄道事件
争点
事案概要  国鉄民営化にさいし、新見駅の構内作業係・構内指導係・運転係から岡山駅の営業係への配属の意思表示に対する効力停止の仮処分申請が却下された事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
裁判年月日 1988年10月27日
裁判所名 岡山地
裁判形式 決定
事件番号 昭和62年 (ヨ) 92 
裁判結果 却下
出典 労働判例534号61頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 右事実によれば、国鉄当時、合理化と経営環境の悪化によって職員の余剰人員が増大していたが、その解雇を避けるため、新会社設立に当たっては、その各種の活用策を考え新規採用の職員のうち余剰人員を右活用策の事業に振り向けることとし、その一環として、新見駅運転係の余剰人員の一人となった債権者を岡山駅営業係に勤務指定し、右活用策の一つである営業機動班の仕事に就かせることとなったことが認められ、したがって、本件勤務指定は業務上の必要があったものと認められる。
 なお、債権者は、右営業機動班の仕事は、債権者でなければできないという代替性のないものではなく、個別的な業務上の必要性はなかった旨主張するが、使用者は業務上の必要に応じ、濫用にわたることのない限り、その裁量により、労働者の勤務場所を決定できるものであるところ、右の業務上の必要性は、当該勤務先への異動が余人をもっては容易に替え難い高度の必要性に限定するのは相当でないから、右の主張は失当である(最高裁二小昭和六一・七・一四、集民一四八号二八一頁参照)。
 (中略)
 右の事実に、債権者は前示のとおり昭和六一年一一月ころ提出した希望調書にその主張の家族の事情について特段の記載をしていなかったこと、国鉄事業は前認定のとおり破綻したのであるからその再建のためには職員は多少の不利益、不便は甘受すべきであること等を併せ考えると、債権者はその主張のような不利益、不便があるとすれば、債務者の提供する社宅に入居することによってその解消を図るなどの真摯な対応を考えるべきであり、債務者が右社宅に入居すれば、債権者が生活環境の破壊として主張する点はほぼ解決し、それによって子供の病気治療上受ける利益はかえって大きいものと認められ、債権者が右のとおり社宅に入居しえない特段の事情があるものとは認め難いから、債権者の生活、通勤上の不利益は、その甘受すべき程度を著しく超えるものとはいえない。
 したがって、右生活環境破壊の主張も失当である。以上のとおりであるので、本件勤務指定については、人事権の濫用と認めるべき疎明がないものというべきである。