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ID番号 04050
事件名 雇用契約関係存在確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 国鉄職員事件
争点
事案概要  国鉄職員の市町村議会議員との兼職につき、国鉄総裁の承認がない限り、当選告知の日に職員たる地位を失うとされた事例。
参照法条 日本国有鉄道法26条2項
労働基準法7条
体系項目 退職 / 失職
裁判年月日 1988年11月30日
裁判所名 仙台高
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ネ) 102 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集39巻6号632頁/タイムズ698号233頁/労働判例530号30頁
審級関係 一審/03931/仙台地/昭63. 2.25/昭和58年(ワ)574号
評釈論文
判決理由 〔退職-失職〕
 前記兼職基準規程三条のとおり、職員が市町村議会議員に立候補したときはその旨を所属長に届け出なければならないものとされ、また、同規程五条により、市町村の議会の議員に当選した職員のうち、兼職を希望する者は、直ちに所属長に兼職の承認願を提出し、その承認を受けなければならないものとされているのであって、この規定を国鉄法二六条二項本文により、地方公共団体の議会の議員は職員であることができず、同項但し書により、総裁の承認を受けた者のみが職員であることができるものとされている規定の趣旨とを総体的に把握すれば、職員が市町村の議会の議員に当選したときは、総裁の承認がない限り、職員の地位を有することはできないのであり、右兼職基準規程の取扱いは、職員が市町村の議会の議員に立候補したときは、所属長において当選の際に兼職の承認をなしうるや否やを事前に審査し、適宜の指導ないし承認の内示をなしうる体制にして、職員が当選後兼職を認められないこととなる場合に生じるであろう混乱を未然に防止するとともに、当選者に対しては兼職を認めるのを相当とする場合にのみ事後的に承認を与えることによって兼職を認めることとしたものであると解釈されるのである。
 もっとも、前述の如く昭和五七年の閣議決定及び総秘達第六六六号通達により、昭和五七年一一月一日以降、新たに又は改選により、公職の議席を得た者に対しては兼職の承認を行わないものとされるに至ったが、当審における証人Aの証言及び弁論の全趣旨によれば、その以前には国鉄職員の市町村議会議員との兼職はむしろ推奨され、或は推奨されないまでも、兼職を認められない例が殆んどなく、職員から所属長に対し、前記兼職基準規程三条の立候補届出がなされても、所属長から職員に対して事前に指導や承認の内示等の措置がなされずにすごし、当選後、兼職の承認がなされるという取扱いがなされてきた実情であったことが認められるのであるが、このような取扱いの実情は、従前、当選者の兼職を不承認とする例が殆んどなかったため、事前の措置を講じなくても何ら混乱が生じるおそれがなかったことによるものと思われかつての前記取扱いの実情をもって前記の解釈を左右すべきものではない。