ID番号 | : | 04053 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本電子計算事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 一年もしくは二カ月の労働契約を約九年間にわたって更新してきた場合につき、本件では解雇法理を類推適用すべき事情は認められないとして、雇止めが有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法629条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 1988年11月30日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和63年 (ヨ) 2251 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働判例531号48頁/労経速報1348号9頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 右各事実によれば、債務者は最初の契約時に業務内容、契約期間を明示して労働契約を締結し、その業務内容は正社員と異なり債務者の一部門における特定業務の補助作業で、数年をもって完了することが予定された一時的なものであり、その後、昭和五六年までは書面は取り交わさなかったものの、債務者は業務の進捗状況を検討して一年毎に契約を締結し、昭和五七年以降は必ず契約期間満了前に新契約締結の手続きをとりアルバイト労働契約書を作成していたものであり、しかも、正社員とアルバイトとは勤務時間、各手当、賞与の支給等において実質的に相違があるのであるから、本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、あるいは期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも債権者と債務者との間に期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたということはできない。しかも、加うるに、債権者は昭和五七年からは「アルバイト勤務規程」に基づき自ら契約期間の明記されたアルバイト労働契約書に署名捺印をし、昭和五八年四月には従来一年であった契約期間を二か月とするアルバイト労働契約書に署名捺印しており、また、債務者は昭和六〇年後半には日証代の業務が完了する見通しとなったため昭和六一年中に右業務担当のアルバイトのうち債権者を除く全員との労働契約を解消し、同年以降の債権者との間の契約更新時には右業務が完了していたため常に更新につき問題が生じ、債務者は更新拒絶を予定しながら、結局紛争を回避するためやむなく更新してきたことからすると、本件各労働契約は単に形式的に更新を重ねてきたものとは認められないから、右各契約につき反覆更新された事実があるからといって期間満了後も債務者が雇用を継続すべきものと期待することに合理性が認められるとはいえない。したがって、債務者が債権者を契約期間満了によって雇止めにするに当って、解雇に関する法理が類推されることもない。 仮に、本件契約関係がある程度の継続を期待することに合理性が認められるとして解雇に関する法理が類推されるとしても、右各事実のとおり、債権者は日証代の業務以外の仕事には意欲がなく、また協調性がないため共同作業ができないこと、他の職種への切り替えを拒否したこと、アルバイト勤務表へ虚偽記入をするという不正行為を繰り返し、再三の注意にもかかわらず止めなかったこと、右業務が完了し、これに伴う債権者の手待ち時間が著しく増加したことなどの事実関係の下においては、債務者が債権者に対してなした昭和六三年四月二八日の契約を更新しない旨の雇止めの意思表示が濫用にわたるものと解することはできない。 してみると、債権者が昭和六二年五月に債務者との間において締結した本件労働契約は一年の期間の限られたものであるから、債権者は右期間満了の日である昭和六三年五月三一日の経過をもって、債務者のアルバイトとしての地位を喪失したものである。 |