ID番号 | : | 04063 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分異議申立控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 駿河銀行事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 違法争議行為、違法組合活動を理由としてなされた懲戒解雇が無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1988年12月12日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和60年 (ネ) 1291 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例531号35頁/労経速報1351号15頁 |
審級関係 | : | 一審/静岡地沼津支/昭60. 4.24/昭和59年(モ)931号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 債務者は、右指名ストは、被指名者をして、ストライキの名目で職場を離脱させ、従組の用務に従事させることを意図したものであるから、違法ストライキであると主張する。確かに、被指名者には、従組の役員で、活発に組合活動をしている者の多いことが一応認められるが、指名ストによる職場放棄の結果として、従組の用務を行うことがあったとしても、このことから直ちに、前記のような争議状態の下において行われた本件各指名ストを、正当目的を欠き又はストライキ権の濫用であると速断することはできず、他に債務者の右主張事実を疎明するに足りる資料はない。 右各指名ストを違法ストライキであるとする債務者の主張は理由がない。 三 債務者は、別紙ビラ等一覧表記載(一)ないし(六)のビラ等には、事実無根ないし事実を誇張、わい曲した記載があり、これらは債務者の信用を毀損するものであるから、右ビラ等の配布は懲戒事由に該当すると主張し、債権者らは、右ビラ等配布は、正当な組合活動であると主張する。 一般に、労働組合が争議状態下において、争議の内容や背景事情についてその主張するところを一般市民等に知らせるため、ビラ等を配布することは正当な組合活動であるといえる。二で判示したところによると、本件ビラ等配布時において争議状態下にあったといえるのであり、また、(証拠略)によれば、別紙ビラ等一覧表の(一)ないし(六)記載のビラ等の内容は、表現において多少誇張されたところがあっても、従組の主張するところを表現したものと一応認められる。本件ビラ等の内容が右の範囲を超えて、ことさらに事実無根のことを記載し、わい曲して記載されたことを疎明するに足りる資料はない。したがって、本件ビラ等配布は、正当な組合活動の範囲内にあったということができる。 四 以上のとおり、債務者が懲戒解雇事由として主張する債権者らの行為は、いずれも正当な組合活動の範囲内にあることに加えて、債権者らの本件懲戒解雇に至る経緯と態様、債権者らが従組執行委員の半数を占め、しかも前記主要幹部を含むことに照らせば、右懲戒解雇は、債務者が従組の組合活動の中心をなしていた債権者らを嫌悪し、同人らの従業員としての地位を失わしめることによって、従組に打撃を与えることを意図してなされたものといわざるを得ない。それゆえ、本件懲戒解雇は不当労働行為に当たるから無効というほかはなく、債務者と債権者らとの間には雇傭関係が存続するというべきである。 |