全 情 報

ID番号 04075
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 工業技術院公害資源研究所事件
争点
事案概要  他の職員の昇任・昇格と同様に昇任・昇格がなされなかったのは、研究所長の裁量権の濫用であるとして国を相手どって損害賠償の請求をした事例。
参照法条 国家公務員法33条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
裁判年月日 1987年4月28日
裁判所名 水戸地土浦支
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ワ) 146 
裁判結果 棄却
出典 労働判例500号70頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
 国家公務員法、旧給与法、人事院規則、通達等の関係法規によれば、給与法が改正される以前の国家公務員の任用制度においては、一般職の職員の職務は、その複雑、困難及び責任の度合に基ずき俸給表に定める職務の等級に分類され、その分類の基準となるべき標準的な職務の内容は、人事院規則九-八別表第一の等級別標準職務表に定められていること(旧給与法六条三項)、右分類は、直接的には給与についての分類であるが、職階制が実施されていないため、法二九条五項により職階制の計画とみなされ、人事院規則八-一二の八一条により従前の例によることとされて、昇格は広い意義での昇任の一態様として取扱われてきたものであること(人事院事務総長通達任企三四四の五条および八十一条関係(2))、昇任及び昇格を含む職員の任用は、国家公務員法及び人事院規則の定めるところにより、その受験成績、勤務成績又はその他の能力の実証に基ずいて任命権者がこれを行うものであり(法三三条一項)、昇任及び昇格の方法は競争試験又は選考によるものとされていること(法三七条一、二項)、昇任についてみると、人事院規則八-一二の八五条二項所定の官職(各省庁の課長等と同等以上の官職)以外の官職についての選考は、任命権者が選考機関としてその定める基準により行うものとされていること(同規則八-一二の九〇条一項、前記人事院事務総長通達四十二条、四十五条および九十条関係)が明らかであって、以上によれば、昇任の選考は、当該組織の管理運営の権限と職責を有する任命権者が各職員の資格、学歴、経験、資質等を総合的に検討し、職員の能率が充分に発揮、増進されるべく、かつ、当該組織の運営全般を考慮して行う固有の裁量に属する行為であると解すべきである。
 昇格については、前記のとおりであるところ、法三三条一項の規定及びこれに基ずく通達にいう勤務成績の内容を具体化したり、その認定ないし選考方法を具体的に定める法律、規則等は存在せず、加えて各職務が俸給表の各級に格付けされ、昇格が昇任と同様に広義の昇任の一形態とされていることを合わせ考えれば、前示の各要件を備えた職員のうちの誰をどの時期に、より複雑困難で責任の度の大きい職務に対応する上位の等級に昇格させるかという判断もまた任命権者の固有の裁量に委ねられているものと解すべきである。