全 情 報

ID番号 04085
事件名 不作為違法確認等請求事件
いわゆる事件名 横浜市事件
争点
事案概要  市の勤務時間条例に基づいて市長が制定した勤務時間規程において三〇分の「休息時間」を各日の勤務時間の始めに割り振ったこの当否が争われた事例。
参照法条 労働基準法34条
地方公務員法24条6項
体系項目 休憩(民事) / 休憩時間(公務員)
裁判年月日 1986年11月5日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (行ウ) 1 
裁判結果 棄却
出典 労働判例493号84頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔休憩-休憩時間(公務員)〕
 本件割振りは、旧勤務時間条例又は現行勤務時間条例において休息時間を設けている趣旨に副わないと解される余地はある。
 そのうえ、本件割振りによって、市職員の登庁時間が月曜日から金曜日までは三〇分間、また、土曜日は一五分間遅くなり、勤務時間がそれだけ短縮したかのような観を呈することは否めない。
 しかし、休息時間においては、職員は職務専念義務(地方公務員法三五条)を負わないものということができるから、市職員が本件割振りによって休息時間に職務に従事しなかったからといって、これをもって右義務に違反するものともいうことができないし、更に、本件割振りが、市職員に当局の指揮監督からの離脱を許し、休息時間の自由な利用又は活動までを保障しているとまではいうことのできないことも明らかである。
 そうすると、休息時間についての本件割振りは、旧勤務時間条例又は現行勤務時間条例に違反するとまではにわかに断定し難いのみならず、地方公務員法二四条五項所定の権衡の原則に違反するとまでもいうことはできない。
 2 休息時間についての本件割振りがその趣旨からみて妥当性を欠き、好ましい措置ということはできないが、本件割振りが横浜市の条例に基づいて市長によって定められた措置であり、これが法令に違反していないことは前記説示のとおりであるところ、本件割振りによって、市職員が勤務から解放され、当局の指揮監督が全く及ばなくなっているとか、あるいは、横浜市の業務の執行に支障が生じているなどの特段の事情の存在などを認めるに足りる証拠もない。
 そうすると、被告が市長として、本件割振りに基づく休息時間を勤務時間として給与を支給したとしても、それが不法行為の要件である、いわゆる違法な行為に当るとまでは断定することができないものといわざるをえない。