ID番号 | : | 04086 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 中島輸送事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | ストライキ中の組合役員の顔写真を撮影しようとした上司に対する暴行・傷害を理由になされた懲戒解雇につき、その事実は存在しないとして無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言 |
裁判年月日 | : | 1985年1月11日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和59年 (ヨ) 2379 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労働判例446号28頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕 右のとおり、債権者にはAを殴打し傷害を負わせたことを認めることができないのであるから、本件解雇は、解雇事由の不存在ゆえに無効である。債務者会社は、後に、本件解雇を即時解雇から予告解雇に変更する旨通知しているが、疎明資料によればこの予告解雇も懲戒解雇の一つであることが認められ、解雇事由には変更がないのであるから、これが解雇の効力を左右するものではない。 更に付言すれば、右のような事態が生じたそもそもの原因は、Aにおいて、債権者らの乗車した宣伝カーや債権者らの顔写真を撮影しようとしたことにあることは明らかである。債務者は、これは、Aが債務者会社代表者からストライキによる不祥事が起こった場合の後日の証拠とするために写真を撮っておくよう指示されていたためと主張する。しかし、組合は前日の二四日早朝に約四〇分間のピケを張ったものの、そのことによって債務者会社等の業務に具体的な支障が生じたとも認められず、ピケ解除後は平穏な状況であったのであり、当日の二五日も、債務者会社と組合との間にはそれまで何らの接触もなかったのであるから、証拠保全の意味であっても右のような写真撮影を行うべき必要性はなかったのである。にもかかわらず、Aは、債権者らの乗車した宣伝カーが到着するのを認めると、直ちにBに写真撮影をさせ、自らも、単に乗車人物の同一性を確認するためというには異常とも言うべき方法で債権者の顔写真を撮影しようとしたのである。 このようなAの行為は、同人が債務者会社の専務取締役という地位にあることや、前記一で認定したような労使関係の経緯に照らすと、組合に対する嫌がらせあるいは挑発行為に等しいものと言うほかはなく、しかも、みだりに容貌を撮影されないという肖像権を著しく侵害するものでもある。したがって、これに対して仮に債権者に殴打に相当するような有形力の行使があり、そして、仮にそれによってAに全治五日間程度の捻挫が生じたとしても(なお、一二月五日の診断に見られる左足関節炎がこの捻挫と相当因果関係にある傷害と認めるには、初診時の診断や日時の経過に照らしても、重大な疑問がある)、その情状において斟酌すべきところが大きく、債務者会社がその一事をとらえて懲戒解雇とすることは、懲戒権を濫用するものとして許されないと言わざるを得ない。 |