全 情 報

ID番号 04087
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 扶桑徳山生コン事件
争点
事案概要  経営悪化を理由とする整理解雇がその要件を充たしており、解雇権濫用にもあたらないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇権の濫用
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
裁判年月日 1985年1月16日
裁判所名 広島地福山支
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ヨ) 84 
裁判結果 却下
出典 労働判例453号142頁/労経速報1232号9頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇基準〕
 右一応の認定事実によれば、被申請人が不況による生コン需要の減少と生コン価格の低落により多額の累積欠損を抱えて経営不振に陥ったことから、就業規則三一条四項の解雇事由である「やむをえない事由により事業を縮小するか、または事業の継続が不可能となったとき」にあたると認めて本件整理解雇に及んだことは相当であり(整理解雇の必要性を肯認できる)、本件整理解雇基準も不当、不合理であるとはいえず、申請人は本件整理解雇基準「3解雇されても生活の影響が少ない者」中の「ロ独身者」に該当するということができる。
〔解雇-解雇権の濫用〕
 さらに、申請人は、本件解雇が解雇権の濫用に当る旨主張するが、前記認定のとおり本件解雇は被申請人が不況による生コン需要の減少により多額の累積損失を抱えて経営ひっ迫を来たしたため会社再建策としてとった措置であって、必要やむを得なかったものと是認でき、その経営不振の原因、端緒として、申請人主張のようにA会社を合併した経営方針の失敗を挙げ、これを非難することは被申請人(生コン製造部門)とA会社(同運送部門)との密接不可分性、一体性を無視した議論であって、当を得ず(確かに合併により被申請人のA会社に対する貸付金が累積欠損として計上されることになったことは事実であるが、仮に合併が実施されていなかったとしても、本来回収不能と取扱われるべきものであり、その場合にはその後もA会社に対し資金援助を続けざるを得なかったであろうと推測されるから、企業体質を強化して合理化を図るため合併に踏み切った経営判断をとらえて、もっぱら非難することは相当でない)、その他本件にあらわれた一切の事情を考慮しても、本件解雇が解雇権の濫用に当るとはいえない。