ID番号 | : | 04088 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 合同企業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 大阪支店から東京板橋営業所への配転命令は業務上の必要性が認められ有効であるが、右命令拒否を理由とする解雇については、会社側の十分な説明もなく、解雇権の濫用にあたり無効であり、その間の賃金請求が認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法24条 民法1条3項 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 無効な解雇と賃金請求権 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反 |
裁判年月日 | : | 1985年1月21日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和58年 (ヨ) 4648 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労働判例452号67頁/労経速報1215号17頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 新谷眞人・季刊労働法136号198~200頁1985年7月 |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕 右認定の事実のもとでは、被申請人がAと申請人のいずれか一名を大阪支店から板橋営業所に配転することによって、いずれの問題についても一応の解決をすることができるものであるから、被申請人が本件配転をする業務上の必要があると判断したことは一応首肯できる。 次に、疎明資料によれば、Aは年令五〇才代の独身女性で老母と共に暮らしており、また大阪支店における業務に精通し、同支店において欠くことのできない有能な人材であったこと、他方、申請人は当時独身であって、本件配転により申請人の生活に特段の支障が生じる虞れはなかったこと、また大阪支店における仕事の経験は些程なく、前記過誤を犯したり、必ずしも貿易手続に精通しているとはいい難いことが一応認められる。 したがって、板橋営業所において担当すべき業務の性質、申請人の勤務状況、生活状況等本件に表われた諸般の事情を考慮すると、被申請人が申請人に対し板橋営業所への配転を命じたことは、業務上の必要性、人選の合理性を一応具備するものとして首肯することができる。 もっとも、申請人は、本件配転命令が専ら申請人を解雇するための形式的理由を整える意図をもってなされたものであって、正当な理由がなく、配転命令権の濫用であると主張するところ、なるほど、本件配転命令が申請人の過誤を契機とし、これに接着した時期になされたことは否めないが、本件配転命令には前示のとおり一応の理由があり、これが申請人の主張するような意図をもってなされたことを窺わせるに足りる疎明資料はない。 そして、被申請人が申請人に対し、事前に本件配転命令に関してその意向を尋ねていないとしても、配転命令権を濫用したということはできない。 そうすると、本件配転命令は正当な理由があり、有効なものであるといわざるをえないので、申請人は板橋営業所において労務を提供しなければならない。 〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕 右の事実と本件配転命令に至る前記認定の経緯に鑑みれば申請人が、本件配転命令は前記の過誤に対する報復であり、申請人を解雇するための口実を設けるためになされたものであるとの疑念を抱いたとしても、無理からぬものがあるがところ、申請人が被申請人代表者に対しこれを率直に述べて配転の理由を尋ねたにも拘らず、被申請人代表者はこれを明らかにすることを頑に拒否し、申請人を本件配転命令に従わせるために尽すべき真摯な努力を怠ったといわざるを得ない。申請人はそのために最終的に本件配転命令を拒否したものであるから、これらの諸般の事情を考慮すると、配転命令拒否の責を申請人のみに帰せしめることは苛酷にすぎるものであって、被申請人が申請人の配転命令拒否の事実をもって本件解雇(実質は懲戒解雇であるが普通解雇とされた。)に及んだことは、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くといわざるを得ない。 そうすると、本件解雇は解雇権を濫用した無効なものであるというべきである。 〔賃金-賃金請求権の発生-無効な解雇と賃金請求権〕 本件配転命令は前説示のとおり有効であるところ、疎明資料によれば、申請人は本件配転命令後も大阪支店に労務の提供をしようとしたが、配転先である板橋営業所には労務の提供をしていないことが一応認められる。 しかしながら、申請人が配転先に労務の提供をしなかったのは、前記認定のとおりの事情によるものであるから、仮に、被申請人が配転の理由を説明して、申請人の疑念を取り除く努力をしていたならば、申請人は本件配転命令に従って配転先に労務を提供していたであろうと推認することができる。 そうすると、申請人が配転先に労務の提供をしなかったのは、専ら被申請人の責に帰すべき事由によるものであると一応いうことができるので、申請人は被申請人に対し賃金請求権を失わないということが相当である。 |