全 情 報

ID番号 04100
事件名 免職処分取消等請求事件
いわゆる事件名 三鷹市公平委員会事件
争点
事案概要  成田空港反対闘争で逮捕されたことを理由とする懲戒免職処分が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
地方公務員法29条1項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 政治活動
裁判年月日 1985年3月15日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (行ウ) 198 
裁判結果 棄却
出典 労働判例457号52頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-政治活動〕
 原告は、職務に関係なく職務時間外にされた政治的行為については、懲戒処分をすることは許されず、また、原告の行為は、違法、不当な新東京国際空港の建設に反対する過程で生じたものであるから、「公務員の信用失墜」にも「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」にも該当しない旨主張する。
 しかしながら、地方公務員法は、地方公務員の服務の根本基準として、「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」(同法三〇条)と定めており、このような地方公務員の職務の特質及びその勤務関係の特殊性に照らせば、職務遂行に関係のない行為であっても、地方公務員の社会的評価を低下毀損する虞があると客観的に認められるような場合には、所属公務員の勤務についての秩序維持確保のために、これを懲戒の対象とすることが許される場合もあり得るものといわなければならない。
 原告は、前認定のとおり、昭和五三年三月二六日の成田三里塚開港阻止闘争に参加し、凶器準備集合、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反、公務執行妨害及び傷害の各罪に該当する行為を敢行し、逮捕され、右各行為について有罪の確定判決を受けたものであって、その動機、目的がどのようなものであったにせよ、右のような暴力的行為を敢行することが、地方公務員としてはもとより一般市民としても到底許容されるものでないことはいうまでもないところであり、たとえ原告の右行為が職務遂行とは関係なく行われたものであるとしても、地方公務員の社会的評価を低下毀損せしめたことは明白であるから、原告の右行為は、地方公務員法二九条一項三号の懲戒事由に該当することはもとより、同法三三条に違反し、したがって同法二九条一項一号の懲戒事由にも該当するものというべきである。
 3 原告は、本件処分は、告知・聴聞、弁明の手続を欠くから違法である旨主張する。
 しかしながら、原告の主張するような、被処分者からの事情聴取とは別個の独立の手続として告知・聴聞、弁明の手続が必要である旨の見解は当裁判所の採用しないところであり、また、(証拠略)によれば、被告教育委員会の職員は、昭和五三年五月一二日、同年六月一四日及び同年七月一一日の三回にわたり千葉刑務所内に勾留中の原告と面会し、弁明の機会を与えていることが認められるから、本件処分に原告主張のような適正手続違反の違法があるものということはできない。