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ID番号 04102
事件名 転任処分取消請求事件
いわゆる事件名 川内南中学校事件
争点
事案概要  学校運営の紛争に論を発する中学校教諭に対する転任処分が適法とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
裁判年月日 1985年3月22日
裁判所名 鹿児島地
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (行ウ) 2 
裁判結果 棄却
出典 労働判例460号77頁
審級関係 控訴審/04725/福岡高宮崎支/平 1. 3.20/昭和60年(行コ)3号
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
 以上の事実によれば、A中における分会と校長との対立は既にB校長時代に始まっていたと推認されるが、C校長は、着任早々から職員会議の性格、主任制問題、職務命令をめぐる問題、管理職任用試験制度問題等々校長としては分会の要求に応じることが不可能ないし困難な事項につき分会員らとの交渉を要求され、分会に対し履行するように求めた交渉のルールを無視した交渉要求にも口では拒否しながらも事実上応ぜざるを得ず、執拗に繰返される同内容の交渉の対応に追われ、落着いて学校経営に取組む余裕がない状態であったこと、しかも、分会員らは、その要求を通すために、事ある毎に校務分掌拒否を言明し、或いは実際に一部拒否し、職員朝会をボイコットする等違法な行為により校長に圧力を加え、校長に対し中学校の教職員としては非常識な各種の嫌がらせや面と向っての罵り雑言果ては暴行、脅迫的行為にも及んだため、両者間の信頼関係は全く損われ、校長の学校経営に対する自信を喪失させるに至ったもので、職員の構成をそのまま維持するときは学校教育に重大な悪影響を及ぼしかねない事態に立至っていたこと、そのうえ、右学校の状況に危惧を深めていた一部父兄ら地域住民が事態の解決を求めて活動を開始し、次第に分会との対立が激化するに及び、社会問題として大きく新聞報道され、市議会及び県議会においても問題として取り上げられるようになったところから、被告委員会は、紛争解決のために定期異動の時期をとらえて校長及びもう一方の紛争当事者である分会員らの大部分の者を含む大巾な人事異動を行う以外に適切な方法がないと判断して原告らに対する本件転任処分をなしたことは明らかである。
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 次に原告らは、本件転任処分は、裁量権の範囲を踰越し、処分権を濫用した違法なものであると主張するので、この点につき判断する。
 前記二(本件転任処分の理由並びに経緯)において認定した事実によれば、本件転任処分の必要性、合理性は肯認でき、かつ本件転任処分につき原告らの承諾を得ず、そのための話合いもなされていないのは、原告らが被告委員会が校長を通じて行った人事異動についての希望聴取に応じなかったためであるから、それが直ちに教育公務員の強い身分保障を定める教育基本法六条二項等の規定に違反するとはいえないし、鹿教組と被告委員会の教育長との間で締結された二・二七合意(右締結の事実及び六項目の文言については当事者間に争いがない。)に違反するものでもない。さらに仮に原告らが転任先において地域住民から「A中の先生」と言われて非難と蔑視を受け、精神的苦痛を蒙っているとしても、それは地域住民の原告らの行為に対する評価の問題であって、そのことが本件転任処分を違法ならしめる理由とはなり得ないし、原告X1が転任により長時間の通勤を強いられたり、同X2が離島に単身赴任を余儀なくされたり、原告らの組合活動が阻害される等の不利益を蒙ったとしても、右不利益は転任に通常伴う事柄であり、右不利益は、本件転任処分の必要性、合理性からみて、いずれもこれを受忍すべき程度のものであり、本件転任処分を違法ならしめるものではない。
 以上説示したとおり、本件転任処分は、裁量権の範囲を超え、或いは処分権の濫用にあたるとは到底認め難く、他に原告らの右主張を認めるに足る証拠はない。