全 情 報

ID番号 04121
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 土佐電気鉄道事件
争点
事案概要  バス料金の窃取、証言者に対する威圧的態度を理由としてなされたバス運転手に対する懲戒解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続
裁判年月日 1985年6月27日
裁判所名 高知地
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (ワ) 23 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1230号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 右2(一)(1)で認定した(イ)ないし(ハ)の各事実(東坪池事件、抗弁2(一)の(1)ないし(3)の各事実)及び右2(二)及び(三)の各(1)で認定した事実(知寄町車庫事件、北秦泉寺事件、抗弁2(二)、(三)の各事実)は、いずれも被告会社のバス料金を不正に着服し、又は着服しようとしたものであり、いずれも就業規則一〇八条、労働協約四九条所定の「勤務成績著しく不良のとき」(各四号)及び「不正行為をなし、従業員としての体面を汚したときでその情状の重いとき」(各一一号、就業規則一〇七条九号、労働協約四八条九号)に該当し、かつ、「情状の重いとき」に該当する。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒手続〕
 就業規則一一四条に「所属長は部下従業員に懲罰に該当する行為のあったときは、本人の始末書を必ず添付したうえ、文書により直ちに報告しなければならない。」旨の規定があること及び原告に対し、本件懲戒解雇がなされる際に、原告の始末書は作成されていなかったことについては、当事者間に争いがない。
 しかしながら、いかなる場合であっても、懲罰を課すためには必ず本人の作成した始末書を右報告書に添付しなければならないとすると、本人が始末書を作成しない場合には、一切懲罰を課すことができなくなるが、かかる見解は、懲罰権が使用者において企業秩序を維持することを目的とする権利であることを無視するものであり、また、始末書を作成した者と作成しない者との間に不公平な取扱いを強いることになり、正義に反する結果を招来させるもので到底採用できない。
 そもそも就業規則一一四条の規定は、懲罰権を行使しようとするものは、事前にできる限り相手方の意見、弁解を聞いたうえで懲罰権を行使すべきであるとの趣旨で規定されたものというべきである。