ID番号 | : | 04127 |
事件名 | : | 労働契約存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 達田タクシー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 勤務時間外に酒気帯び運転をし検挙されたこと等を理由とするタクシー運転手に対する解雇の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 企業外非行 |
裁判年月日 | : | 1985年9月13日 |
裁判所名 | : | 金沢地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和57年 (ワ) 252 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例468号66頁/労経速報1256号9頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-企業外非行〕 たしかに、飲酒運転は、社会的非難も極めて強く、いかなる理由があるにせよ、自動車運転手としては厳に慎しまなければならないものであり、まして、職業上乗客を安全に運ぶことを最大の使命とするタクシー運転手としてはなおさらであり、タクシー会社にとっても、その社会的評価、信用を低下させる可能性は大であって、業務運営上到底許容しえないものであることはいうまでもない。 しかしながら、タクシー運転手である以上、酒気帯び運転をすればそれだけで当然に解雇が相当であるとまで断ずるのは、甚だ妥当を欠くものであり、当該酒気帯び運転の内容、前後の事情、業務中か否か、会社に与えた具体的影響等をも総合考慮した上で、解雇にすべきか否かを判断すべきである。 これを本件についてみると、前記二の1で認定の諸事実によれば、本件酒気帯び運転は原告の非番の日になされたものであり、かつ、運転した車は被告営業車ではなく原告個人の自家用車であること、原告は自らすすんで飲酒をしたものではないこと、また飲酒後直ちに運転を始めたわけではなく、入浴し、約四時間の仮眠をするなどアルコール気を抜くよう努力し、一応大丈夫との自己判断の上で運転を始めていること、そのためか運転後約二〇分して検挙された際、酒気帯びの程度はかなり弱かったこと、比較的軽い罰金刑ですんでいるのみならず、聴聞の結果免停の期間が減縮されていることなどが認められ、他面、本件酒気帯び運転が新聞沙汰になるなどして具体的に被告の社会的信用に悪影響を与えたことを認めるに足る証拠はないこと、以上によれば、本件酒気帯び運転自体は、他のより軽い懲戒処分の対象になることはあっても、解雇の対象とすることは相当でないといわなければならない。 |