全 情 報

ID番号 04147
事件名 配転命令効力停止仮処分申請事件
いわゆる事件名 アヅミ事件
争点
事案概要  元組合委員長に対する配転命令につき、同人の同意をうるとの合意がなされていたとして、配転命令の効力を停止した事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1985年12月27日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 昭和60年 (ヨ) 4020 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例468号12頁/労経速報1257号12頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 被申請人の就業規則(昭和四四年九月制定)第四六条は、「従業員は会社が業務運営上必要がある場合に転勤を命じ或は職場又は職種の変更を命じた時は、これに従わなければなりません。但し、事情がある時はこれを申述べることが出来ます。」と規定し、同第六三条は懲戒事由の一として、「正当な理由なく転勤又は職場、職種の変更等の業務命令を拒んだ者」(第一三号)と規定している。
 右就業規則は、従業員の転勤、職種の変更等の応諾義務を明記しており、前記認定事実によれば、申請人は入社後間もなく右規定を認識し、特段異議を述べることなく就労を継続してきたことが認められることからすれば、職種の変更に関してはともかく、転勤に関しては、労働契約締結に際して包括的に同意しているものと解することができる。
 もっとも、前記認定事実によれば、申請人の係長昇格に際し、被申請人は、申請人を本社勤務とし、少なくともA社長在任中は本社以外に転勤させない旨約したこと、申請人も社長から右約束がなされたことから、組合員資格喪失を伴う係長昇格に応じたことが認められる。そうすると、申請人の勤務場所を大阪本社以外とする配転をするには、申請人の同意を要し、その同意のない配転命令は無効と解するのが相当である。
 前記認定事実によれば、被申請人は、申請人の同意を得ずして本件配転を命じたもので、本件配転命令は無効というべきである。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 本件疎明資料によれば、申請人は、現在妻と長女(一一歳)、次女(七歳)の四人家族で、肩書住所地に居住し、被申請人から支給される給料が唯一の収入であって、これによって生計をまかなっていること、申請人は本件配転命令後も大阪本社に出勤し、労務の提供をしているが、被申請人は大阪本社での就労を拒否し、昭和六〇年九月六日以降の賃金の支払をしていないことが一応認められる。
 従って、被申請人が申請人に対してなした本件配転命令の効力を仮に停止する必要があり、また賃金仮払については、前記月平均実支給額二三二、六九七円の範囲で必要性があるが、右範囲を超える部分及び本案訴訟の第一審判決言渡以降の賃金仮払を求める部分については必要性がないというべきである。