ID番号 | : | 04148 |
事件名 | : | 地位保全・金員支払仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 三東紙工事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 経営コンサルタントを会社経営から排除するための行為をした課長に対する解雇につき、右行為は自己保身のためであり企業経営を危くするものであるとして有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務妨害 |
裁判年月日 | : | 1984年5月10日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和56年 (ヨ) 4190 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労経速報1206号26頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-業務妨害〕 被申請人提出の疎明資料によれば、右代表者が解約の通知を依頼した弁護士は申請人の従前からの知合いであり、申請人が右弁護士を右代表者に紹介したこと、右代表者が同年七月二二日右解約の件で弁護士事務所を訪れた際に申請人も右代表者に同行しており、また、申請人は右の件について右日時以前の同月一日に独りで同弁護士を訪ねて相談していること、右代表者はAの前記解約について短期間のうちにその意思を二転三転させていること、即ち、昭和五六年七月一〇日の被申請人の取締役会において右代表者、取締役両名及びAが出席し、その際Aの経営士業務契約の継続を承認していたのに、前記の通り右代表者は同月二七日付書面により前記解約の通告をなし、同年八月一日にはAに会って右解約の撤回をしていること、一方、右代表者は被申請人の株式を全て所有し、自己の意思を実現させようとした場合には取締役を解任させるなど手段を講じられる立場にあったこと、右代表者は経営能力もなく、これまで会社の実際の運営は他人にまかせてきたもので、自己が実際の経営をしたことはなく、代表権を要求する者についてはこれを拒絶したことはあるけれども、実際の経営をしている者を排除してまで自己が会社の経営に乗り出すことは考えられないこと、申請人は昭和五六年六月B代表者と共にC、D及びEを訪ねており、特に、Eに対して「Y会社は現在コンサルタントのA先生が経営全般を見ておられるが、うまく行っていない。特殊な業界なのでA先生も腕の振いようがないと思うし、会社としても少しでも経費を切り詰める必要があり、A先生の紹介でY会社に入社した自分としては心情的には甚だ辛いが、自分はY会社に雇われているのであって、A先生の碌を食んでいるわけではないので、A先生にY会社から手を引いてもらい、我々幹部で切り廻して行くのが会社の為と判断し、B社長にもその旨進言した。ついては社長が腰くだけにならぬよう励ましてもらいたい」旨述べていること、さらにB代表者がAを解約することを事前に知っていたのは申請人のみであり、申請人は同代表者が右の件について取締役その他の者に相談しないように働きかけていることが疎明され、これらの事情を総合して判断するならば、申請人は被申請人における保身をはかるためにAを被申請人から排除することを決意し、申請人がAの経営士業務契約を解約するようにB代表者に勧めたものであり、その結果、同代表者が前記の通り解約したものと推認するべきである。右認定に反する申請人提出の疎明資料は被申請人提出の疎明資料と対比して措信できず、その他右認定をくつがえすに足りる資料はない。 (四) Aの経営士業務契約を解約するか否かは被申請人の経営に重大な影響を与える事柄であり、申請人がAの経営のやり方に反対するのであるならば、右代表者のみならず取締役会等しかるべき機関に申し出てその是非を検討すべきであったのであり、申請人の前記認定行為は会社の企業秩序を乱し、その経営を危うくするものというべきである。 申請人の前記認定行為は被申請人の就業規則に規定する懲戒解雇事由にも該当するものというべきであって、被申請人のした前記普通解雇はもとより正当であり、解雇権の濫用に該らないことは明らかである。 |