ID番号 | : | 04152 |
事件名 | : | 金員支払仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 大阪相互タクシー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 上司に対する暴行傷害を理由とする懲戒解雇につき、本人の反省もみられ、懲戒権濫用にあたり無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言 |
裁判年月日 | : | 1984年11月9日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和58年 (ヨ) 45 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労経速報1210号15頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕 以上認定した諸事情を考慮して、被申請人が申請人を懲戒解雇した処分の相当性について判断する。 申請人が四〇日足らずの間に二度にわたり上司に対し反抗的態度に出たことは極めて悪質であり、特にA部長に対する暴行傷害行為は重大であり、企業秩序を乱した行為として懲戒解雇することもやむを得ないと考える余地が十分考えられる。しかし、右行為については、五、1及び2、(一)ないし(三)に認定した申請人に有利な事情、即ち申請人が当時被申請人と厳しい対立関係に立っていたY会社労働組合に所属し、その執行委員をしており、そのような状況のもとで、B部長から通常は注意を受けないようなことを命じられて、つい立腹して暴言を吐いたもので(暴言を吐いたことはもとより正当化されるものではない)、その動機に同情しうる余地が存するものであり、申請人も直ちに自己の非を認め、後日反省書を提出していること、A部長に対する前記暴行、傷害については申請人が積極的にA部長に暴力を振ったものではなく、連行行為であり、傷害もその過程で負わせたものであって、診断書によれば通院加療七日の傷害と診断されてはいるものの、それのみから傷の程度を明確に判断することは困難であるうえ、前記暴行の態様から推認すると比較的軽いものと評価できること、前記各上司ももう少し柔軟に接してもよいと考えられる余地があることなどを考慮すると、申請人が黒伝反則を犯した行為を加味しても、申請人には一時かっとなって立腹しやすい性質があるもののいずれもすぐに思いなおして反省するところが見られるものであり、あくまで企業に反抗するというものではなく、申請人を企業から排除しなければならない程度のものとまで断定することはできず、懲戒解雇以外の処分で十分であったというべきである。それゆえ、前記懲戒解雇はその原因となった行為と対比して甚だしく均衡を失し、社会通念に照らして合理性を欠くものといわなければならず、懲戒権を濫用したものというべきであるから、前記懲戒処分は無効である。 |