全 情 報

ID番号 04167
事件名 休職処分取消請求事件
いわゆる事件名 福岡中央郵便局事件
争点
事案概要  郵便集配の現業職員が、前後二回にわたり料金を納付しないで新聞郵送用帯封を使用して、アカハタを配達区域の配達区分棚に挿入したとして起訴され、加えて起訴休職処分がなされ、その効力が争われた事例。
参照法条 国家公務員法79条2号
体系項目 休職 / 起訴休職 / 休職制度の合理性
休職 / 起訴休職 / 休職制度の効力
裁判年月日 1970年2月27日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (行ウ) 12 
裁判結果 認容
出典 行裁例集21巻2号389頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔休職-起訴休職-休職制度の合理性〕
 (1) 起訴による郵政職員の休職の根拠については国家公務員法第七九条第二号があり、これには職員が刑事事件で起訴された場合においては、その意に反してこれを休職することができると定められている。右は公務員が国民全体の奉仕者として職務に専念する職務を負い、これに違反する場合は刑罰その他の不利益な処分を科せられる反面、法律又は人事院規則に定める事由による場合でなければその意に反して休職にすることはないとして公務員としての身分を保障しようとするものである。
 (2) そして、休職処分は職務上の義務違反をした職員に対する懲罰、非難の見地からではなく公務の適正な能率、運営の確保のため任用上の見地から規定した職員の身分に関する処分であつて、もともと、このような職員を秩序維持の見地から終局的に懲罰もしくは非難するにある懲戒処分とはその性質、目的を異にする。したがつて、職員が起訴によつて身体を拘束されるとか、公判廷へ出頭することによつてその職務に専念することに直接支障がある場合、あるいは職員が将来懲戒免職等を受けるおそれもあるから、これをそのまま職務に留まらせることが職員の公正と廉潔、ひいては職務の公正に疑いを生じさせ、公務に対する国民の信頼を失わせるなどの公務遂行上支障がある場合、あるいは将来有罪が確定した場合、それが公務員の欠格事由となることもあり得るから、かかる浮動的地位にある職員をそのまま職務に留まらせることが相当でない場合などにはこれを休職にする合理的理由があるといえるが、休職に処せられた職員は休職の期間中別段の規定なきかぎり何らの給与を受けられず(国家公務員法第八〇条第四項)その間他の私企業にも就きえず(同法第一〇三条)休職の事由が消滅しても定員に欠員がない場合は引き続き休職にされることがある(人事院規則一一-四第三条第二項)など多くの実際上の不利益を蒙ることを考え合わせると、職員が起訴されたこと自体で直ちに職員の公正廉潔に対する疑いを生じさせるものであるとして、それだけの理由でこれを休職にすることは到底許されないものと解さなければならない。
〔休職-起訴休職-休職制度の効力〕
 本件事案は軽微であつて情も軽く、原告を引き続き職務に従事させても公務遂行上支障がないと客観的に認められる場合に該当し、原告を休職にせずに裁判の結果を待つべき場合であつたといわなければならない。それにもかかわらず原告が起訴されたことをもつて原告を休職にした被告の本件処分はその裁量権の範囲を誤つたものというべきであり、違法として取消しを免れない。現に原告が復職しているとしてもなお右休職処分取消の利益がある。