ID番号 | : | 04171 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 三菱電機事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 四・二八沖縄奪還闘争に参加して現行犯逮捕のうえ起訴されたことを理由とする懲戒解雇の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 信用失墜 |
裁判年月日 | : | 1970年3月11日 |
裁判所名 | : | 神戸地尼崎支 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和44年 (ヨ) 249 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 時報599号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 横井芳弘・労働法学研究会報855号1頁/横井芳弘ほか・季刊労働法76号76頁/下井隆史・月刊労働問題147号116頁/荒木誠之・判例評論142号27頁/西川美数・労働経済判例速報732号27頁/倉地康孝・労働判例100号35頁 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-信用失墜〕 本号は「社員としての」体面を汚したときを対象としているから、それは会社の他の従業員に対する外部の評価、引いて会社自体の対外的名誉ないし信用を保護する趣旨に出ている規定である。従って、この場合の「刑罰にふれる行為があって」は、会社の内外を問わず、また職務との関係の有無を問わない趣旨に解される。また、刑罰にふれる行為があったか否かの認定は、必ずしも刑事裁判において有罪が確定したことを要するものでもなく、事案によっては捜査機関による捜査が開始されたか否かさえ問う必要もない場合もあるであろう。しかし、その認定は、いやしくも懲戒解雇という従業員の生活権をおびやかす処分の基礎となるものであるから、行為が客観的かつ明白な場合(例えば衆目の見ている前で行われた傷害事件の如き)に限らなければならない。すなわち、有罪裁判の確定によらず、本号を適用する場合は、通常人をして充分納得せしめるに足る証拠資料を必要とするというべきである。 本件において、債権者が起訴されたという事実は、いまだ右要件を充たさず(起訴者数百名に上るような集団犯罪を、例えば、単独殺人罪における起訴と同律に論ずることはできない。)、債権者についてこれを明白かつ客観的に認定しうる資料の存在は疎明されない(新聞に報道された、さきに認定の検察庁の談話の如きは、いまだ右資料とはなりえない)。 本号を解釈するに当って、後段の「社員としての体面を著しく汚した」と重視し、前段をゆるやかに解釈する見解もありうるであろうが、仮りにそのように解釈するとしても、本件がこれに当るとは、にわかに認め難い。けだし、債権者が起訴されたからといって、債権者は、従業員総数五四、〇〇〇名を擁する大会社たる債務者会社の一平工員に過ぎず、また事案の性質に鑑みても、債務者会社の従業員としての体面を「著しく」汚し、引いて会社の名誉、大口取引先等に対する信用関係を害したとは考えられないからである。 |