ID番号 | : | 04179 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 青森銀行事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 赴任拒否闘争を企画、指導、実行したことを理由として組合委員長に対してなされた懲戒解雇の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 労働組合法8条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1970年4月9日 |
裁判所名 | : | 青森地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和43年 (ヨ) 143 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働民例集21巻2号492頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 中嶋士元也・ジュリスト481号147頁 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 労組はその要求貫徹のため労組員の異動対象者二六名に赴任を拒否せしめ旧任店で就労せしめたものであるが、これはAおよびBに対する債務者銀行の人事上の処置が不当であるとして転勤それ自体については争つていないBを除く二五名の異動対象者にその赴任を拒否せしめたという点において特徴がある。 しかして、かような赴任拒否闘争は単に新任店に赴任しないという限度では、消極的に使用者に対し労働力の提供を拒否する点でストライキ的争議手段と解しうるが、さらに進んで使用者の就労拒否命令を排除して旧任店で強制的に就労を続行することは、使用者の人事権を無視し、その人事権能の一部を労組において行使せんとするものであるから、たとえ争議行為が多かれ少なかれ使用者の労務指揮権を排除する性質を帯びているものであるとしても、かような争議行為は前記目的との関連を考慮しその闘争期間が極めて短期間であるとかの特段の事情が存在しないかぎりは違法性を帯びるものといわなければならない。 (中略) ところで使用者が懲戒事由の行為に及んだ従業員に対しいずれの懲戒処分を選択するかは使用者の裁量に委ねられている事項であるが、しかしながら右裁量は決して自由且つ無制約のものではなく、その事由の軽重は勿論、過去および現在の同種行為者に対する処分と対比し、その選択した処分が著しく不相当なものであるときは懲戒権の濫用として右処分は無効のものと解すべきであるところ、これを本件についてみるに、懲戒解雇は前記のとおり労働者に対しその生計の途を断ついわば極刑というべきものであるから、その行使は企業の存立に重大な影響をおよぼすか、職場内の秩序を著しく乱す等の場合にのみ許容されるべきものであるところ、本件争議行為により古川支店など三支店と本店営業部においてかなりの混乱、紛争が生じ、且つ労組の宣伝行為により債務者銀行の信用と名誉が害せられたとしても、他の各支店においてはそれほどの混乱、紛争が生じた形跡は窺えないから債務者銀行の存立をおびやかすほどの重大事態には至らず、これに前記のような副委員長以外に対する処分との対比、前記(二の(5))認定のとおり昭和三二年から昭和四一年までの間労組において本件と型態は異なるとはいえ恒常的に争議手段として赴任拒否戦術を行使してきたのに対し当時の労組幹部は何らの懲戒処分をも課せられなかつたことおよび債権者Xは昭和四一年八月に労組委員長に就任したもので独裁的に労組を指揮していたものとは認め難いことなどの諸事情を併わせ考慮するとき、債務者銀行が債権者Xを懲戒解雇処分に付したのは相当のものとはいいがたく、解雇権の濫用というべきであつて、右解雇処分は無効のものといわなければならない。 |