ID番号 | : | 04183 |
事件名 | : | 賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | チッソ事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 争議に関連する新旧組合の対立に関連して間に分け入った警察官に対する傷害を理由に懲役二月執行猶予一年の確定判決を受けて懲戒解雇された者がその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 有罪判決 |
裁判年月日 | : | 1970年5月13日 |
裁判所名 | : | 熊本地八代支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和44年 (ワ) 9 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 時報616号100頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-有罪判決〕 以上認定の諸事実によれば、原告の前記行為が争議という異常な事態におけるものとはいえ法秩序に違反するものであって、是認し得ないことはもとよりであるが、然しながらこれをもって直ちに計画的且つ悪質なものということはできない。なるほど争議の長期化に伴い新旧組合間の対立が激化し、再三暴力事件が発生していたことは前認定のとおりであるけれども、他方当時における旧組合員の意識としては、この争議が組合の総力を傾け尽した斗争であって、新組合の立場は、係長主任団の活動に始まりAグループとの合体による新組合結成を経て会社新組合間の就労に関する協定の締結およびその後の積極的な組織拡充への動きに至る全体の過程を通じて、結局は会社と結託して組織切崩しにより争議の敗北を図るものであるとの深い不信の念に貫かれており、原告等本件当日の旧組合員の行動は、Bアパートを新組合による組織切崩しの拠点とみて組織防衛上重視していたこともあって、このような追い詰められた切実な組織防衛の気持から発したものであること、および当時旧組合員のみならず市民の一部においても、市内の暴力団と目される団体が積極的にストライキ妨害のため動いているものと受取られていたことが窺われ得るから、当日の原告等旧組合員の行動が防衛的なものでなく計画的且つ攻撃的なものとは必ずしもいえない。のみならず本件当時の警察官の職務執行は、実力行使による制止に踏み切った段階では未だ双方の一部では話合いが続いており、違法とまではいえないにしても必ずしも適切な措置とはいえず、原告の行為はこのような警察官の実力行使に誘発された偶発的犯行と考えられ、原告に対する刑が懲役二月執行猶予一年という比較的軽いものである事実をも考え併せると原告の右行為も企業秩序維持の上から原告を企業外へ排除しなければならない程悪質重大なものとみることは困難である。 |