全 情 報

ID番号 04185
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 鹿島建設事件
争点
事案概要  ダム・発電所建設工事現場での落石につき使用者の損害賠償の責任が追及された事例。
参照法条 民法715条
民法717条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1970年5月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ワ) 9039 
裁判結果 一部認容
出典 時報601号41頁/タイムズ253号284頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 被告Y会社は、このような岩盤の下に、斜面を六、七メートルの高さまで削り建設工事用通路を開設してダム本体掘削工事現場への作業員の通行、建設資材の運搬、ブルドーザー等の往来をなさしめ、かつ同通路の維持・管理をしていた。
 このような建設工事用通路を開設し、維持・管理する場合、たとえ右通路が一般市民の往来に供される公道とは用途を異にし、直接ダム建設工事に従事する関係者のみを通行させる目的をもつものであっても、いやしくもこと人命の安否にかかわる危険性がある限り、安全施設には十分な配慮をなすべき義務があり、ましてダム建設工事につき高度の技術と長年の熟練を有する作業員ばかりでなく、出稼ぎ労務者のように単純労務に従事するにすぎない者をも作業に従事させる工事現場においては、右作業員、労務者の注意能力を基準として安全を確保するための、適切な安全施設が備えられなければならないことはいうまでもない。
 (中略)
 そうであれば、建設工事用通路上方の斜面において岩石の剥離等崩落の危険性がある場合においては、のり面の清掃を実施するとともに、かかる危険な岩石を存置しておく場合は、下方の危険個所についてロックボルトによる岩石の補強、コンクリート吹付による剥落の防止、防護ネットあるいは防護柵の設置による道路上への落石の防止等の適当な安全施設を設置することが法規上も必要とされることは言うまでもない。