ID番号 | : | 04192 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 門司信用金庫事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 懲戒解雇理由があるとしてなされた普通解雇が有効であるためには、懲戒解雇理由に当たるとともに普通解雇理由にも当たる必要があるとされた事例。 違法な争議行為・組合活動を理由としてなされた解雇につき、おのおのについて違法とはいえないとして解雇無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒解雇の普通解雇への転換・関係 解雇(民事) / 解雇事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1970年6月30日 |
裁判所名 | : | 福岡地小倉支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和40年 (ヨ) 497 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集21巻3号1052頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒解雇の普通解雇への転換・関係〕 被申請金庫は、その主張する申請人両名の一連の行為は、就業規則の懲戒解雇理由に当るが、申請人両名の将来の就職等を考慮し、右懲戒解雇規定を適用せず、就業規則第二六条三号の「已むを得ない事業上の都合によるとき」の条項を適用して、すなわち被申請金庫従業員として適せず、雇傭契約の継続が困難であることを理由に、普通解雇に処したと主張する。 前掲乙第一号証によれば、昭和三九年九月一日実施の被申請金庫の就業規則は、普通解雇について第二六条に別紙のとおり規定する一方、懲戒処分について第六八条ないし第七六条に別紙のとおり規定していることを認めることができる。 ところで、懲戒解雇理由があるのに普通解雇をすることは、被解雇者に予告手当の支払等の利益を与えるので、許される場合もあるものと解すべきであるが、その解雇の当否は、その主張する解雇理由が懲戒解雇理由に当ると共に普通解雇理由にも当るか否かによつて決すべきものと解するのが相当である。 〔解雇-解雇事由-違法争議行為・組合活動〕 右遅刻早退外出申請書提出、名札佩用、タイムレコーダー打刻の制度は、なんら合理性を欠くものとはいえないので、従業員はこれに従うことを要し、申請人両名がこれを拒否したことは、それが個人的になされたものであれば不当なものというべきである。 遅刻早退外出申請書提出は従前の口頭で足りたものを文書に改めたものであり、名札佩用は制服着用と同じく、共に労働条件の変更というべきであるが、タイムレコーダー打刻そのものは労働条件とはいえず、これによつて正確に把握された出退勤をどう取り扱うかゞ労働条件となるものであるから、タイムレコーダー打刻は労働条件ではないがこれと密接な関連を有する事項というべきである。そして、労組は、労働条件である遅刻早退外出申請書提出、名札佩用およびタイムレコーダー打刻に関連する遅刻、早退の取扱いという労働条件について、被申請金庫に対し団体交渉を求め、被申請金庫がこれを拒否するや、団体交渉を求めて、遅刻早退外出申請書提出拒否、名札佩用拒否、タイムレコーダー打刻拒否を争議行為として指令したのであるが、右争議行為は、単なる不作為以上のものではなく、被申請金庫の業務に著しく不当な攻撃を加えるものではないし、前記第二認定の第三次争議の状況に照し、正当なものというべきである。なお、タイムレコーダー打刻、遅刻、早退の取扱いについて団体交渉が尽されたとは認め難い。したがつて、右指令に従つてした申請人両名の右各拒否行為を問責することはできない。 |