全 情 報

ID番号 04194
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 三東工事件
争点
事案概要  建設工事における転落死亡事故による損害賠償請求につき、労働安全衛生規則の規格に適合しているときは、民法七一七条の責任阻却事由にはならないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働安全衛生規則108条
民法717条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1970年7月6日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和40年 (ワ) 2949 
裁判結果 一部認容
出典 時報614号67頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 《証拠略》によると右丸太の折損は亡Aらにおいて足場を利用しての作業中突然起ったものであることが認められるところ、本件全証拠によっても当時右折損をもたらすについて原因を与えたと考えられる特段の事情の存したことは何ら窺い得ないのであるから、この折損は足場特に折損した当該丸太自体に瑕疵があったことによるものと推認せざるを得ない。なる程《証拠略》を綜合すると、被告Y会社の主張するように本件鋏鋲用足場は安全衛生規則上の規格に適合した強度をもち、本件折損丸太も被告Y会社主張の長さ口径の新しい桧材で事故の検査においても特にこれといった瑕疵は発見されなかったことが認められるのであるが、このことは、本件足場が取締規定である安全衛生規則上の規格に合致していたというだけのことであって、右折損が亡Aらが通常の方法以外の方法でこれを利用して作業していたかまたは作業をしていたということ以外の何らかの外力が作用して起ったということの窺われない以上前記のとおり推認せざるを得ない。
 (三) してみれば亡Aが本件足場上から転落した本件事故は本件鋏鋲用足場に瑕疵があったことに基づくものといわなければならないところ、本件足場は土地の工作物とみるべきであるから、被告Y会社は工作物の占有者兼所有者として民法第七一七条による損害賠償の責に任ずべきである。