ID番号 | : | 04195 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三菱重工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 造船所における下請会社の従業員の作業上の事故につき、元請会社に元方事業者としての安全責任があるとして、右事故を理由とする損害賠償請求が認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法709条 労働災害防止団体法57条1項 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1970年7月9日 |
裁判所名 | : | 山口地下関支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和42年 (ワ) 85 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | タイムズ259号187頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 (二) 被告会社がその下関造船所で船舶修理事業などをするものであることは被告会社において明かに争わないので自白したものとみなすが右事実によれば被告会社は労働災害防止団体等に関する法律(以下「労災団体法」という)施行規則一三条所定の元方事業主である。被告会社が本件船舶の修理について請負業者の被告Yに鋏鋲の下請をさせたことは原告らと被告会社間に争いがなく、そして〈証拠〉によると原告ら主張の「被告会社が本件船舶の修理作業統轄者であつたこと」の前提である下請人労働者のほか被告会社労働者も本件船舶の修理作業に従事したことが認められ右両事実によれば被告会社は本件船舶の修理元方事業主として労災団体法施行規則の定めるところにより下請人労働者と被告会社の作業が本件船舶において行なわれることによつて生ずる労働災害を防止するため労災団体法五七条一項所定の措置を講ずる義務をもつ本件船舶の修理作業安全責任者であつたのである。本件ファンが被告会社の所有であることは原告らと被告会社間に争いがなく、本件ファンが作業用器具であることは被告会社において明かに争わないので自白したものとみなすところ、「労災団体法五七条一項所定の措置」というのは「統轄管理者の選任、協議組織の設置、作業間の連絡及び調整、作業場所の巡視その他必要な措置」であつて「その他必要な措置」についての労災団体法施行規則一九条、二〇条、二一条には「元方事業主が所有する作業用器具についての事故防止措置」を規定していないけれども、労災団体法にいう「労働災害」には二条によれば「労働者の就業に係る設備による負傷」も含むが右にいう「設備」を「作業用器具を除外した意味」に解する合理的理由がなく、したがつて労働災害防止のための労災団体法五七条一項による元方事業主の「その他必要な措置」を講ずる義務のなかには「元方事業主が所有する作業用器具についての事故防止措置」を講ずる義務も含まれると解さなければならぬ。 さて〈証拠〉を綜合すると本件ファンは高さ四三・五糎、外径五三糎の鉄製円筒型で内部には下部から六・五糎のところに長さ約一〇糎の鉄製羽根七枚があり原告Xが左手を吸いこまれた下部には直径七糎の鉄棒一二本が三・五ないし四・五糎の間隔でついていたが金網はついていなかつたことが認められ、〈証拠判断省略〉〈証拠〉を綜合すると本件ファンは電動式二二〇ボルト五馬力でかなりの吸引力があることが認められ、〈証拠判断省略〉そして〈証拠〉によれば本件ファンが置いてあつたマンホールの入口は短径四〇糎で長径は六〇糎であるが本件ファンが置いてあつたため二〇糎位せばめられていて人一人がやつと出入できる位のものであつたことが認められるのをあわせ考えると本件ファンの下部には鉄棒がついていたとはいえ通常人の手が並行すれば入る間隔であるから金網がついていなければ吸引事故がおこるおそれがあつたことは明日である。 ところで反証がないから本件ファンの下部に金網がついていなかつたのは被告会社においてつけていなかつたものと推認するほかはなく、そうすれば被告会社は本件ファンについて労災団体法五七条一項による事故防止の措置を講ずる義務を怠つた過失があるから本件事故につき固有の過失による損害賠償責任がある。 |